涙、涙の横浜DeNA今季初勝利…“ハマの番長”三浦監督が9戦目にして連敗地獄を脱出できた理由とは?
平良が肘の違和感で抹消され、空いた先発のチャンスを三浦監督は、昨年ファーム監督として育て「去年も日に日に成長してオープン戦でもいいピッチングをしていた」と評価していたプロ未勝利の阪口に与えた。 武器は、最速152キロを示したストレートとカットボールである。マスクをかぶった戸柱は、その2つをほぼ同じ割合で使った。投球の約30%ずつだ。「角度がある」と三浦監督が褒めるストレートは、本来、カットボールを生かすのものだが、この日のリードは、ストレートをカウント球に、カットを勝負球に使うケースと、逆にカットをカウント球に、ストレートを勝負球に使うケースを使いわけて広島打線に的を絞らせず、そこにアクセントで落差のあるカーブとスライダー、スプリットを交えた。三浦監督は、現役時代“番長カーブ“と呼ばれたスローカーブを要所で使ったが、主に見せ球だった。だが、阪口―戸柱バッテリーは大胆にもカーブを勝負球に使った。一回二死二、三塁のピンチで松山を三振。二回にも一死一塁から堂林をカーブでスイングアウトさせ、戸柱がスタートを切っていた走者を刺し三振ゲッツーに斬って取った。 三浦監督も「縦のカーブを戸柱がしっかりと止めてくれるので安心して思い切って低めに投げていた。いいコンビネーションだった」と、その配球を絶賛した。 連敗中に問題となっていた配球問題も解消されていた。 先発投手に必ず訪れる“試練の壁“は初回と勝利投手の権利の生まれる5回である。二死をとってから、その5回に壁がやってきた。田中を四球で歩かせ、打率5割男の菊池をフルカウントにして三遊間を割られた。球数は100球を超えていた。 スタジアムに、この日、一番の激励の拍手が起きた。 三浦監督は動かなかった。 「ここを乗り越えてもらわないと」の期待をこめての続投である。 阪口は「マウンドでは一人だが戦うのは一人じゃない。心強い先輩たちがいる。一人で抱え込んでいてはダメ」とバックを信頼した。3番の西川を追い込んでボールゾーンにスプリット。好打者が思わず手を出してセカンドゴロに倒れた。5回3安打無失点。阪口は、雄叫びを上げてガッツポーズをした。 オープン戦では好投を続けていたが、開幕はローテーションから外れた。三浦監督からは「開幕からは外れるが必ずチャンスがあるから」と声をかけられた。その言葉が支えになっていたという。 試合後は、一度、手にしたメモリアルボールを「監督になっての1勝。監督のためのボールかな」と三浦監督に渡したが、「ナイスピッチング」の言葉と共に阪口の手に戻ってきた。 この日、大阪から観戦に訪れた母にプレゼントするという。 「女手ひとつで三兄弟を育てていただいた恩があります。活躍している姿を見せるのが一番の恩返し。この1勝は母にプレゼントしたい」