緑内障は自覚症状がないまま病状が悪化してしまう危険性がある

健康問題の不安のなかでも、「目が見えなくなること」の恐怖は大きい。失明に至る原因は様々あるが、「薬の副作用」でも起こりうることはあまり知られていない。副作用の場合、視野がゆっくりと欠けるため、進行に気づけずに厄介だと専門医が警鐘を鳴らす。 【画像】日本人の失明を含む視覚障害の原因をグラフで見る

教えてくれた人

平松類さん／眼科専門医・二本松眼科病院副院長

異常に気づくのが遅れやすい

　年齢を重ねると目にも不調が出てくるが、「老眼」などと違って自覚症状がほとんどない病気が「緑内障」だ。 　患者数推定400万人、40才以上の20人に1人が症状を持つとされる緑内障は、日本人の失明原因の第一位である。二本松眼科病院副院長で眼科専門医の平松類医師が解説する。 「緑内障は、視神経が侵されて視野が徐々に欠けていく病気です。傷んだ視神経は元には戻らず、一度罹患すると症状が改善しないため、点眼などで進行を抑制する治療しかできません。自覚症状が乏しいという特徴もあり、私の患者さんでも知らないうちに症状が悪化していて、来院時には既にほぼ見えなくなっていたという方が少なくありません」 　日本眼科学会の「緑内障診療ガイドライン」によると、緑内障のリスク要因は、高齢、糖尿病、低血圧、家族に緑内障罹患者がいる、眼圧が高いなど多岐にわたる。 　だが、そのうちの1つに「薬」があることはあまり知られていない。

「続発緑内障」の副作用をもつ薬がある

「緑内障には主に3つのタイプがあります。大半を占めるのが、眼球を満たす水（房水）を眼外に排出する際のフィルターが目詰まりして起こる『開放隅角緑内障』。ほかに房水の出口である隅角が狭窄・閉塞して起こるのが『閉塞隅角緑内障』であり、加えて薬の使用や全身の病気が影響して発症する『続発緑内障』があります」（同前） 　平松医師によれば、日本人の緑内障のうち、「開放隅角緑内障」が約78％、「閉塞隅角緑内障」が約12％、「続発緑内障」が約10％を占めるという。 　厄介なのは、緑内障の1割を占める続発緑内障の場合、患者自身が発症のリスク自体を認識できていないという点だ。 「薬の添付文書には緑内障の副作用があることが明記されていますが、多くの人が『続発緑内障』をもたらす薬のリスクについて認識できていません。また注意してほしいのが、続発緑内障は視神経の障害や視野の欠けがゆっくりと進むため、異常に気付くのが遅れやすい傾向にあることです」（同前） ※週刊ポスト2024年11月22日号