王様のブランチで話題の感動作! 『カフネ』、日本語に訳せない感情を表したタイトルはどんな意味?
「王様のブランチ」でも取り上げられるなど、発売されてから各所で話題沸騰中の『カフネ』(著 : 阿部暁子)。 【画像】言葉にできない関係性を描いた感動作 「言葉にできない関係性」を描く本作を、売り場の最前線に立つ書店員のひとたちはどう読み解くのか? 今回は久田かおりさんによる書評を紹介します。 ---------- 阿部暁子『カフネ』 一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。 法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていた。弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく。 ----------
「誰かを助ける」行為の真の意味
幼い子どもの、色素の薄い、腰のない柔らかな髪にそっと手を入れて梳く心地よさを知っている。その時に胸にしみる愛おしさも。子どもに限らず、愛おしい人へのそんな仕草を表す言葉「カフネ」。 その言葉の意味が少しずつ少しずつ胸を満たしていく。 何度も涙をぬぐい、何度も嗚咽を漏らし、その度にページにしおりを挟み、今自分の中でせりあがっている思いを丁寧に折りたたんでまた、続きを読む。 親に愛されることを望まない子どもはいない。優しく抱きしめられたい、愛おしそうに見つめられたい、ただただ愛されたい、それだけを望み続ける。そのために本当の自分を偽り、思いを殺し親の望む自分であり続ける。 不妊治療と考えの違いから離婚を切り出し去っていった夫。親に溺愛される年の離れた弟の突然の死。自暴自棄の自分を救い出してくれた弟の元恋人。ひょんなことから始めた家事手伝いのボランティア。そこで出会う他人の助けを必要とする人々。 誰かを助けることは、誰かに助けてもらってもいいんだということを自分自身が受け入れることでもある。 助けて欲しいという声を聞き、伸ばされた手をつかんで離さないための力。それがいつか自分自身が救われることにつながっていく。