《トランプ氏勝利》米国市場で日本企業のビジネスチャンス拡大 巨額インフラ整備で建設・製造業セクターに注目、住宅・不動産分野も急成長の好機
11月5日(現地時間)の米国大統領選は、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)の「復活」が鮮烈に印象づけられる衝撃的な展開となった。民主党のカマラ・ハリス副大統領(60)との大激戦により、世界一の超大国の「分断」の根深さが白日のもとに晒されることにもなったが、この結果は世界と日本の未来に、何をもたらすのか──当然ながらリスクも残るが、またとないチャンスでもある。【前後編の後編】
米国の住宅需要を掴め
米国市場でも、日本企業のビジネスチャンスが広がり得る。 熾烈な大統領選のなかで両陣営とも巨額のインフラ投資を公約。新政権発足で内需が高まるのは間違いない。 マーケットバンク代表の岡山憲史氏が注目しているのは次の分野だ。 「日本の建設や製造業セクターは米国での受注機会を増やすチャンスです。とくに高速鉄道や交通インフラの整備などの分野で、日本企業は技術と実績を持っている。米中の緊張関係で中国企業が米国市場に入れないことも日本企業の受注には有利ではないか。 また、新たなインフラ整備は効率的な物流網の構築に寄与するため、日本の輸送機器メーカーや物流関連企業にとってもメリットがある。もちろん、IT分野もさらなる成長が期待できるので、日本の電機・通信産業、クラウド関連企業などにも追い風になるでしょう」 そのなかでも急成長が見込まれるのは住宅・不動産分野だという。 激しい集票合戦のなかでトランプ氏はハリス氏と競い合うように住宅政策を発表し、住宅供給を増やす方針を打ち出してきた。 「トランプ氏は『住宅ローン金利の引き下げを目指す』と派手に打ち出した。住宅供給の拡大は米国にとって重要な課題になっているだけに、真っ先に手をつけていく分野になります。住宅は関連産業の裾野が広く、住宅メーカー以外の日本の企業もこの機に米国市場でうまくニーズをつかめば業績を大きく伸ばせるでしょう」(岡山氏)
政策転換ひとつで思いも寄らぬ“落とし穴”
ただし、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏は米国のリスクも踏まえておく必要があると指摘する。 「日本の直近の景気後退は2018年11月から2020年5月まで続きましたが、要因の一つはトランプ大統領による中国製品への追加関税だったとされています。米国政府の対中措置が巡り巡って日本の景気に影響を与えた。米国は今後も世界一の経済大国であるだけに、その政策転換ひとつで思いも寄らぬ“落とし穴”が生じることがあるので、動向に注意を払い続けておくべきです」 日本の大メディアは大統領選報道で米国の分断の深刻さや民主主義の危機ばかりを報じているが、そこだけを見ても本質を見誤る可能性がある。 米国経済はタフで、国内に分断と矛盾を抱えながらも政府はビジネスチャンスをつくり、成長のエンジンをふかそうとしている点を見逃してはならない。 日本はリスクに怯えるだけではなく、それに乗り遅れてはならないのだ。 (前編から読む) ※週刊ポスト2024年11月22日号
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