こうしてSNSが日本の政治を動かすようになった…選挙報道を勝手に"自主規制"したテレビにもう後はない
■20年前はもっと盛大に選挙報道していた 放送法は4条で「政治的公平」や「できるだけ多くの論点」を求めている。だが選挙報道をするなとは書いていない。公職選挙法は選挙に関する報道や評論を行う自由を保障している。選挙報道について法的な縛りは何もないのだ。 むしろ20年前は選挙報道が盛大に行われていた。2005年の郵政民営化を争点にした総選挙では、当時の小泉純一郎首相が自民党内の反対派を「抵抗勢力」とし、マスメディアはそれを煽って「劇場型選挙」と呼ばれた。選挙でマスメディアは大はしゃぎしていたのだ。度が過ぎていた気もするが、選挙をメディアが盛り上げるのはちっとも悪いことではないと私は思う。少なくとも今よりずっといい。 だがその後、選挙報道はじわじわと後退していく。もともと各政党は選挙時に自分たちの扱いが短いとクレームをつける傾向があった。だからNHKは特に各党の放送での時間にフレーム単位で配慮してきたと聞く。だが民放はそこまでではなかった。 ■自民党からの“クレーム”で委縮するように 故安倍晋三氏は特にメディアに介入したがる政治家だった。第二次安倍政権時の2012年にTBSの番組に出演した際、街頭インタビューでの市民のアベノミクス批判に対し、意見の取り上げ方に意図があるのではと顔色を変えて言った。 その2日後、当時の自民党副幹事長・荻生田光一氏の名で各キー局に文書が届いた。選挙期間中の報道に「公平中立」を求め、「出演者の発言回数及び時間」などを同じにするよう要望している。 これも一つの契機となり、選挙報道に各局がナーバスになっていく。それでも選挙報道をしなかったわけではないが、少しずつ慎重になっていった。各政党、各候補者の出演時間を測って同じ時間になるように配慮し、首長選挙では扱わなかった候補者も名前だけは画面に表示するなど、「公平中立」と言える手法を整えていく。 それでも、たとえば2016年7月31日の東京都知事選挙では小池百合子氏と自民党都議会のドン・内田茂氏と対立し自民党は増田寛也氏を擁立、野党勢は鳥越俊太郎氏に一本化し先に立候補を表明していた宇都宮健児氏が出馬を取りやめた。こうした経緯をマスメディアは詳しく取り上げて盛り上げた。