子供の貧困対策、なぜ政府は「寄付」を呼びかけるのか?
政府が子供の貧困対策に「子供の未来応援基金」を設置して民間からの寄付を呼びかけていることが、議論を呼んでいる。国が重要政策として位置づける子供の貧困対策で、なぜ政府は「民間からの寄付」という形を取るのだろうか。
子供の貧困対策全体の予算は8742億円
政府が子供の貧困解消に向けた政策の一つとして「子供の未来応援基金」を設置したのは、10月1日。政府は10月19日の子供の未来応援国民運動会議で、「国民の力を結集して、社会全体で子供の貧困対策に取り組み、貧困の連鎖を解消する」ものとして、民間からの寄付の協力を呼びかけた。 子供の貧困対策は、安倍政権が「新三本の矢」の一つとして掲げる重要政策の一つだ。日本の子供の貧困率は1990年半ばから上昇傾向にあり、2013年は16.3%。一人親世帯にいたっては同年、貧困率は54.6%に達している。OECDによると、2009年の日本の子供の貧困率は34カ国の中でワースト10で、一人親世帯の貧困率は最下位だった。 そこで政府は2013年、「子どもの貧困対策法」を制定。2014年には具体的な対策を示した「子どもの貧困対策に関する大綱」を決定した。大綱を受けて今年度、子供の貧困対策は主に文部科学省、厚生労働省、内閣府が担っている。今年度予算では、文科省が学校へのスクールソーシャルワーカーの配置や、地域の無料学習支援塾を設置する事業などに5150億円。厚労省が、児童相談所の相談態勢の強化や児童養護施設の学習支援などに3591億円。内閣府が、支援情報を集約する事業などに1億2千万円。計8742億2千万円の予算が子供の貧困対策に使われている。
なぜ寄付なのか?
民間に寄付を募る「基金」の設置も、この大綱に沿った事業だ。大綱には「官公民の連携等によって子供の貧困対策を国民運動として展開する」という項目が明記されており、民間資金を用いた支援が例示されている。国の予算とは別に設置されたこの「基金」は、子供の貧困対策に取り組むNPOや民間企業などの事業の運用に用いられる計画だ。