子供の貧困対策、なぜ政府は「寄付」を呼びかけるのか?
なぜ、「寄付」なのか。内閣府の担当者は「国は国として大綱に基づいて政策を推し進めるが、それと並行して、政府だけでなく社会全体で子供を支えていくような運動が必要だと考えた」と説明する。「子供の貧困問題は深刻であるにもかかわらず広く認識されておらず、『自助努力の範疇ではないか』と言われることもある。しかし、子供は社会全体の財産。貧困を社会全体の問題と捉え、国民一人ひとりが誰でも活動に参加できる事業の一つとして、まずは『基金』という象徴的な方法を選んだ」と説明する。 内閣府の担当者は、民間の寄付を集めることによる別の利点も主張する。「国の予算で行う事業の場合はどうしても画一的な支援方法になり、特定の地域や分野に偏った支援はできない。その点民間の基金であれば、NPOなどが特定の地域や分野に特化して行う事業でも自由に使うことができる。子供の貧困対策には、地域に密着して子供に寄り添う草の根活動こそが必要で、柔軟に用いることができる民間の基金が適している部分もある」
支援現場の声は
実際に支援の現場にいる支援者は、どう感じているのだろうか。子供の貧困対策に取り組む「一般財団法人あすのば」の小河光治代表理事は「民間の資金には、困窮している子どもを一定の支援条件に当てはまらないからといって差別することなく、柔軟に運用できるメリットがある」として、民間の基金を活用する方法自体は否定しない。しかし「国がより具体的な政策を示して必要な支援を拡充してからでなければ、民間の理解を得るのは難しいのではないか」と指摘する。 「児童扶養手当や給付型奨学金などの現金給付の拡充が実施されるようになれば、貧困世帯にとっては『社会から見捨てられていない』と感じることができる大きな支援策になる。政府がパフォーマンスではなく、貧困解消に実効的なこうした具体策を示すことができれば、『政府も一肌脱いだのだからみんなでやっていこう』という気運が高まり、『基金』への批判も少なくなるのではないか」 来年度予算の概算要求では、関係する3府省全てが子供の貧困対策に関わる予算の増額を要求している。内閣府によると、今月19日までに集まった「子供の未来応援基金」への寄付金は160万円。政府がスローガンに終わらずに効果的な政策を打ち出していくことが、寄付を始めとした民間運動の盛り上がりにもつながるだろう。 (安藤歩美/THE EAST TIMES)