読書は「時間の無駄」? Z世代が読書に時間を割かなくなった本当の理由とは?
近年、一冊の本を読み切れない大学生が目立つようになったと報じられている。 米誌「アトランティック」によれば、この傾向は、偏差値の高い名門校でも同じであるようだ。 【画像】若者の集中力がなくなったわけではない。主な原因は「本を読むことに対する価値観が変わったこと」 同誌は米国の有名大学に勤める33人の教授にインタビューをおこなっている。それによれば、コロンビア大学やバージニア大学などの教授たちは「学生が複数の本を読むことに圧倒されている」と報告している。 また「難解なアイデアに直面すると、学生はときに理解しようとするのを諦めてしまう傾向がある」という。 そして、過去10~20年間で「学生たちの文学との関わり方や、文学に対する価値観が変わった」という意見でほぼ一致している。 なぜこのような変化が起こったのか? まず、中高等学校では、詩や本の抜粋、ニュース記事が教材の中心となり「全編を通して本を読む機会が減少している」点に同誌は触れている。 実際、コロンビア大学の一部の学生は、大学入学前に最初から最後まで読んだ本が1冊もないと認めている。
「能力ではなく価値観の変化」
だだ、これは現代の若者に長編の本を読む能力がなくなったわけではなく、「読書に対する価値観が変わったこと」が主な原因だと同誌は強調している。その価値観の変化を促しているのが、「本を読むことはそれほど重要ではない」という社会に漂う「文化的なメッセージ」だ。 現代の学生は、本を読まなくなったとはいえ、決して勉学を怠っているわけではない。むしろ、上の世代よりもスケジュールは過密であり「多くの学生が不安を抱えている」と複数の教授が同誌に明かしている。教授らによれば、現代の学生たちのスケジュールは、卒業後の就職に関連した活動でほぼ埋まっているという。 同誌が掲載した1971年の調査では、大学生の37%が、大学生活で最も重視しているのは「(将来の)経済的安定」だと回答し、73%が「有意義な人生哲学の形成」だと回答した。 しかし、2015年までに、経済的成功を最優先する学生は82%に増え、人生哲学の形成を最も重視する学生は47%に減少した。 このような卒業後の経済的な成功を最優先する傾向は、学生だけでなく、保護者や評論家らの間でもみられ、年々、将来のキャリアに直結するコースのほうが強調され、人文科学的な研究の重要性は軽視されていると、コロンビア大学の古典教授ジョセフ・ハウリーは同誌に語っている。 「このような環境では、小説を読むのに何時間も費やすことは非生産的かのように思えるかもしれない」 同大学の英語教授のジェームス・シャピロもまた、「一冊読み切るのに20時間はかかる文学作品に、気軽に、あるいは完全に没頭するには(現代の学生たちには)時間と集中力の要求が高すぎる」と述べている。 しかし、この変化には「希望がある」と同誌は締めくくっている。 なぜなら「私たち上の世代が文学を軽視する価値観を作ったのであれば、それを元に戻せばいいからだ」。 責任はZ世代にだけあるわけではなく、親や教育者、政治家を含め、すべての人が読書の重要性を強調し、この衰退を食い止める役割を果たす必要があると述べている。
COURRiER Japon