Softspokenが語る、ポストハードコアにポジティヴを落とし込む理由、日本カルチャーの影響
米シンシナティの音楽シーン
―アメリカでみなさんが活動の拠点としているシンシナティの音楽シーンはどんなものなんですか。 クリス:ミックスだね。メタルコアとかデスコアとかハードコアとかパンクみたいなスクリームを多用するヘヴィなサウンドと、まったくヘヴィではないインディ系のロックと。だから、僕たちはシンシナティの音楽シーンには上手くフィットしてないんだ(笑)。 ケビン:さっき、スクリームと歌のバランスの話をしたけど、今回のツアーに参加しているサポートメンバーはスクリームばかりするバンドにいて、俺が前にいたのはまったくスクリームしないバンドだったんだ。 ―それだと自分たちの居場所を確立するのは大変そうですね。 クリス:ソウダネ。僕たちはシンシナティ以外の街で受け入れられてるっぽいから、もっと離れた街で活動したいかな。 ―シンシナティってほかの大都市からけっこう離れているイメージだから、ほかの街に行くのも大変なんじゃないですか。 クリス:いや、決して大きくはないけど、車で2、3時間も行けばいろんな街があるよ。実際、そういう街でライブするし。大都市でもナッシュビルとかシカゴなら5時間ぐらいで行ける。西海岸のバンドに比べると5、6時間のドライブは普通だね。前にやったツアーはバッファローからアリゾナまで30時間かけて移動したし。 サム 俺は飛行機より車のほうが好き。 ―まさにアメリカ的な感覚ですね(笑)。では、アメリカ全体で見たときにロックシーンはどんな状況ですか? それに対してみなさんはどう感じていて、どう行動しようと思っていますか? クリス:進化してるね。ロックシーンはすごくいい感じだし、すごく強いと思う。メタルがロック化したり、カントリーがロック化したり、クロスオーバーが起こってる。たとえば、最近だとメーガン・ザ・スタリオンがSpiritboxとコラボしてたし、Softspokenみたいなバンドにとってもいい状況だと思う。 ケビン:カントリーアーティストがロックになったり、ロックアーティストがカントリーになったりもしているから、俺らはもっとカントリーにならないとね(笑)。 ―あはは! サム:あまりそうはしたくないけど、俺たちとはしては常にソーシャルメディアと関わり続けることも重要だと思う。今回日本に来ることができたのもそうだし、与えられた機会はすべて活用しようと思ってるよ。 ケビン:でも、俺たちにとってSpotifyの数字とかチケットセールスよりも重要なのは、自分たちに忠実であることと、自分たちがしていることに満足することなんだ。それがうまくいくことを願ってるし、成長につながってほしいと思ってる。 ―音楽以外でSoftspokenに影響を与えているものはなんですか。 クリス:サムと同じように、僕は本当に普通な生活を送っていて、ラッキーなことに人生で困難な経験はしてきていないんだけど、僕にとっては家族の存在がかなり大きな影響を与えてると思う。「ザ・ロード」っていうコーマック・マッカーシーという人が書いた本があるんだけど、父と息子の関係について書かれた作品で、そこから強く影響を受けて僕も自分と息子の関係についての歌詞を書いたことがある。サムも彼の家族について曲を書いてたことがあるよ。 ―ケビンはどうですか? ケビン:俺もかなりポジティブな半生を送ってるから、自分が悪い人生を送ったかのような歌詞を書く代わりに、ポジティブなメッセージを送ることに重点を置いてみんなを元気づけようと努めてるよ。 ―みなさん揃って辛い半生を送っていないということですが、こういう音楽をやる上では逆に自分たちの幸せな境遇をコンプレックスに感じることはないんですか。 サム:いい質問。実際、俺はこれまでの人生で狂ったような経験をしたことがないから、歌詞を書くのはこれまでかなり大変だったよ。だけどあるとき、自分たちやみんなが見たいと思う歌詞を書かないといけないって感じるようになったんだ。たとえば、俺は成長期に自分の皮膚に関する悩みがあってかなり辛かったんだけど、そのときの気持ちを深堀りしてみるとそれまで見えてなかった自分の弱さが見えてきて、そこからどうやってポジティブな方向に自分を持っていくか考えるようになったんだ。あと、育ちはよかったけど、時々心が不安定になって自殺したいって思ったこともあるよ。だから、Softspokenに関わるというのは本当にポジティブなことで、家族全員が支持してくれるし、理解してくれてるんだ。 クリス:音楽をやる上での目標のひとつに「人とコネクトしたい」ということがあると思うんだけど、僕もほかのバンドの歌詞を読みながら「ああ、この人は何か狂ったことを経験したんだなあ」と感じることはあるけど、実際にその歌詞と似たような経験をした人ほどはコネクトできていないのかもしれない。でも、ファンとつながりたいからといって、自分に正直になるのをやめて辛かったフリをするのは違うと思う。