河合優実、静かなる大ブレイク──映画『ナミビアの砂漠』インタビュー
第77回カンヌ国際映画祭・国際映画批評家連盟賞を受賞した映画『ナミビアの砂漠』で主演を務める河合優実は、自身の“大ブレイク”をどう見るのか。23歳の俊英は、静かに語りはじめた。 【写真を見る】河合優実、寛一郎、金子大地ほか
河合優実「流され過ぎないように」
宮藤官九郎によるテレビドラマ「不適切にもほどがある!」、薬物依存から抜け出そうとする女性の生きざまを見せ切った『あんのこと』、アニメーション映画の声優に初挑戦したヒット作『ルックバック』─河合優実の俳優人生は、デビュー5 年にして転換期を迎えている。本人の中に“まだやっていない”と思えることはあるのか?カンヌ帰りの河合にそんな質問を投げかけると、穏やかに微笑みながら「未経験の領域」について語り始めた。 「私自身は、まだまだ知らない世界だらけという意識でいます。『月9』のような、どメジャーな番組はまだ経験していませんし、Netflixなどの配信作品もやったことがありません。NHK連続テレビ小説『あんぱん』でご一緒する北村匠海さんは、『幽☆遊☆白書』で3年もの長い期間を費やしたと伺いました。実は、これまでは“河合さんも一緒に考えよう”というタイプの監督とのお仕事が多く、厳しいまでに俳優の表現と向き合う監督の現場に飛び込んだら、今までにない発見があるのではないかと思っています」 順風満帆過ぎる出世街道を歩んでいるように思えるが、本人は「俳優として育っていく道がどんどん多様化している気がして、レールがないからこそ迷いがある」と吐露する。「この道を進めば大丈夫」という“必勝の型”がない現代は、自由度が上がるぶん自己判断にゆだねられる局面も多い。何を選び、いつ立ち止まり、どこに懸けるのか──。ただガムシャラにやり続けるだけでは、息が続かずに倒れてしまう。 「目の前のことをずっと一生懸命やってきたので、つい最近まで“体感としては変わりません”と答えてきましたが、最近は不安になってきました。やっぱり忙しいなと思いますし、インプットの時間も減ってきてしまっています。私自身がこの状態でずっと続けられる人ではないとも思っているため、人間的な生活を送りながらも仕事ができるように自分の状態をきちんと見つめていたいです」 ここまで多様な作品に関わり続けてきたことで「自分の中にこんなチャンネルがあったんだ、と発見していくのはとても楽しい」と成長も実感している。役者としての理想像にも、変化が訪れた。 「自分が楽しいだけではなく『幸せだな』と思える現場に出合ったり、様々な方に観ていただけたり、評価していただける機会がどんどん増えていくなかで、『やりたいことだけじゃなくてやるべきことは何か』という責任感が強くなってきました。今後はもっと『自分の役割は何か』が浮き彫りになってくる予感はしています」