報酬以上の結果を得るために経営者が知るべき、士業のうまい使い方(横須賀輝尚 経営コンサルタント)
■あなたの代わりに、士業に学んでもらう
士業はやはり学習ということに関しては、飛び抜けて長けています。でも、あなたへの積極的な情報提供は、そもそも頭にない。基本的には「待ち」ですから、依頼をもとに粛々と仕事をする存在です。 ですから、あなたが主導権を持って、士業を使い倒す。そのくらいの認識で合っています。もっと要求すれば、もっと成果を上げてくれる。そういう存在です。 私もいち会社経営者なので、顧問弁護士、顧問社労士、顧問税理士がいます。私の目的としては、手続き関連と困った時の相談が最大の目的なので、低額の顧問料で都度別途報酬を支払うという方式を取っています。 でも、いつも聞き方としては「こんなことってお願いできますか?」「こういうことも相談していいですか?」と常に士業の枠を超えた相談をしています。ときに、顧問士業に驚かれることもありますが、それでいいのです。 もう、士業の業務の枠なんて考える必要はありません。何か関連したら、関連しなくても、近いと感じたら。士業に「できますか?」と聞いてしまいましょう。あなたの代わりに学んでもらい、あなたの代わりに調べてもらう。積極的な活用をお勧めします。 多少、重たいかなぁと感じても問題ありません。報酬が必要なら提案してもらえばいいし、そこは普通の商取引といきましょう。 頼みやすい伝え方としては、「○○の仕事って先生にお願いできますか? 報酬がかかる場合は、遠慮なくおっしゃってください」です。私はいつもこれだけ。もう今後、あなたが勉強する必要はありません。士業に学んでもらい、それを短時間で教えてもらえばいいのです。
■報酬の値下げは誰も得をしない
私は士業専門のコンサルタントで、誰よりも士業の経営に詳しいという自負がありますが、個別士業の深いところまでは熟知していないため、私が運営している士業コミュニティ等を通じて取材をすることもあります。 その中で、経営者に対してメッセージはあるか?との質問に、多くの士業がこう答えました。 「報酬の値引きだけは、やめてほしい」 と。これは何も私が士業側だから、こういうメッセージを載せるわけでも、士業の支持を得たいから掲載するわけでもありません。そうではなく、実はこれが士業の仕事の質を下げる最大の要因なのです。 士業はもともと報酬規程があり、誰がやっても報酬額が決まっていました。もちろん、自由経済社会の中では、大変不自然です。そのため、現在は完全に自由になっています。 2000年以降、インターネットが普及し始めてから、それまで営業とは無縁の世界だったこの世界も、競争を強いられるようになり、マーケティングを知らなかった前世代の士業は、最悪の手段を取ってしまいます。それが「値下げ」です。 例えば、「0円設立」など、価格が暴落した会社設立手続きなどは、そもそも50万円とか60万円の報酬を得ても良い仕事でした(当時は「日当」とかもあったので、かなり報酬は高かったといえます)。 ところが、報酬が自由化してから、営業をしてこなかった士業は、仕事を取るために価格を次々と下げていったのです。まあ、これは士業が悪い。 その結果、先生と呼ばれる存在から業者扱いに近くなる士業も出てきて、より価格は下がっていきました。こうして、いまの相場感につながります。ですから、いまの価格はそもそも過去に比べてだいぶ安いのです。 士業の仕事はなかなか高度で、ミスも許されません。価格が下がったらといって、ミスが許されるようになるわけではなく、0円設立だとしても希望の設立日に登記できなかったら、誰だって激怒するでしょう。 価格が下がるということは、数をこなさなければならなくなるということで、ひとつひとつの品質は必ず下がります。そうなると、「調べる」「学ぶ」「考える」などの士業の良さが活かせなくなってしまうわけです。 ですから、もしあなたが士業に依頼するなら、報酬額にフォーカスするのではなく、結果に注目すべき。高い報酬を支払い、その報酬を超える結果を士業に出させる。そのためには、安い報酬ではなく、高い報酬を支払うべきです。 あなたが求める結果以上のものが出れば、報酬額が多少高くても良いでしょう? あなただって高い報酬をもらったら、きっと良い仕事をするはず。高い報酬をもらえたら、ゆとりをもって1件1件の仕事に集中できる。こうして士業を使い倒すべきなのです。