水原一平氏の「学歴詐称疑惑」に見る“盛る人”の危うさ 理想の自分を目指し、努力して近づいても、かつてのウソで台無しになる
これは、中高年を中心に「国際ロマンス詐欺」の被害が相次いでいることとも通底する。海外在住や外国籍の軍人、医師、パイロットなどを名乗る人物と親密になり、金銭を求められる。「2人の未来のために」などと言いくるめられ、入金すると……。金の切れ目は縁の切れ目。途端に「恋人」は姿を消してしまう。警察庁の調べによると、2023年に1575件が確認され、被害総額は約177.3億円にのぼるという。 ネットメディア編集者らしい話も挟んでみよう。SNS上では、たまに「元GAFA勤務」を名乗るユーザーを見かける。この肩書を見たとき、「ああ、グーグルとかで働いていたのね……」と判断したあなたは、ちょっとお人よしが過ぎる。ためらいなく信じて、情報商材を買わされてからじゃ、後の祭りだ。
そもそも「有限会社GAFA」という企業で働いていたかもしれない(実在していたら申し訳ありません)。たとえIT大手を指していたとしても、その職種や雇用形態はさまざまだ。Amazonの配送センターや、Apple Storeの店員も、間違いなくGAFA勤務と言える。中には「業務委託で数カ月だけ働いていた」という人もいるかもしれない。 もちろん、これらの人々がGAFAの正社員より格下というわけではない。筆者が言いたいのは、あくまで、その人の本質を見抜くことが重要なのではないかということだ。
あらゆる可能性を考えず、「なんかすごそう」と過大評価してしまえば、いつしか「国家間のサイバーテロと戦うホワイトハッカー」だとか「数兆ドル規模の事業を差配するプロジェクトリーダー」といったイメージを膨らませてしまいかねない。 多くの場合では、彼ら、彼女らのメッキははがれ、「怪しいやつだった」となるのだが、それでおしまいではない。先入観にとらわれない訓練をしない限り、今度は正しい経歴を伝えているのに「あいつも怪しい」と疑い出す、風評被害の世界がやってくる。そんなディストピアを避けるためには、一人ひとりが、第一印象を割り引いた「正味の実力」で評価するしかない。