水原一平氏の「学歴詐称疑惑」に見る“盛る人”の危うさ 理想の自分を目指し、努力して近づいても、かつてのウソで台無しになる
『週刊文春』の報道は、「ショーンKという虚像」を浮き彫りにした。熊本出身でハーフではなく、経歴として挙げていたテンプル大学卒業も、ハーバード・ビジネス・スクールでのMBA取得も事実ではなかった。すぐさまレギュラー番組は出演自粛となり、そのまま降板。ほぼ表舞台から姿を消している。 経歴をめぐるスキャンダルといえば、「サッチー騒動」も思い出す。プロ野球・野村克也監督の妻として知られた野村沙知代氏が、1990年代後半に衆院選に出馬。選挙公報にコロンビア大学への留学経験を書いたことが虚偽として、東京地検に告発された(のちに嫌疑不十分で不起訴処分)。
同じく永田町がらみでは2003年、当時の自民党副総裁を下して、初当選した民主党(当時)衆院議員の「ペパーダイン大学卒業」という経歴に疑義が示され、大きな話題を呼んだこともあった。 これらの「経歴詐称疑惑」に共通するのは、その舞台が海外である点だ。もし自分がウソをつくなら……という立場で考えてみると、まず「関係者に接触しづらくバレにくい」ことが挙げられるだろう。言語の壁はもちろん、そもそも物理的距離も離れている。
たとえ疑われても、「日米で『在学』や『卒業』の解釈が違う」などと言ってしまえば、「ふむ、そういうものか」と納得してしまう気持ちもわかる。情報源へのアクセスの難しさは、追求・追及を諦める要因にもなる。自分で確かめにくい情報であれば、ひとまず、より詳しいであろう相手の発言を信頼するのが手っ取り早い。 ■「盛る」行為を気づかぬうちに手助けしている一般市民 いくつか例を出してきたように、とくに海外経験を絡めた詐称は、日本でもたびたび話題になる。
もし経歴を詐称したとすれば、当然もっとも非があるのは、ウソをついた側だ。しかし、社会全体を眺めると、そうした「盛る」行為を気づかぬうちに手助けしている一般市民は、それなりに多いように思える。「海外留学」や「外資系勤務」といった肩書をありがたがって、実力以上に評価してはいないだろうか。 もちろん、海外経験を実際に積んで、バリバリ活躍している人材は数多い。しかし、その人自身を評価する以前の段階で、「舶来の雰囲気」を感じ取るだけで思考停止して、評価を見誤ってしまう。