WBCチームドクターが指南する体幹トレーニング 「肋骨部が硬い人のチェック方法」「ケガした場合はこう歩け」
柔軟にする方法は
ならばと、胸郭を柔軟にする方法を石井氏に教えてもらった。 まず体の左右どちらかを下にして横向きに寝る。左側を下にした場合で説明すると、その状態で右足を前に、左足を後ろに投げ出し、走っているポーズをとる。そして右手を後頭部に添え、上半身をひねって天井を向く→顔を伏せて床を見る、という動きを繰り返す。胸を開いたり閉じたり、ストレッチする感覚でゆっくりと……。右側を下にしての運動も同様である。 これを1日に最低左右5回ずつこなすと、徐々に胸郭が「柔らかく」なってくるという。やがて上半身の動きが下半身に伝わり、スムーズに歩ける効果が得られる。
腕は“振る”のではなく“振られる”
上半身の回転や動きをよりダイナミックにするのが腕の振りだ。この点、米川医師によると、 「手は“振る”というよりも、体の動きに合わせて“振られる”というイメージを持たれてはどうでしょう。実は、野球のピッチャーも同じなんですよ」 たとえばWBCにも出場した山本由伸選手と佐々木朗希選手のピッチャー二人。彼らの投球フォームは明らかに異なる。 「山本選手は重心がブレないように、脚をあまり上げずに投げる一方、佐々木選手は左脚を大きく上げるダイナミックなフォームです。ただ、下半身をうまく使って体重を移動させ、体の回転運動でエネルギーを生み出し、あとはその流れで腕をしならせるように振って投球するという点は二人とも同じ。つまり、腕は一連の動作で生み出されたエネルギーによって“振られる”イメージなんです。投球フォームが多様であるように、もちろん歩くときの腕の振り方も人それぞれ違ってかまいません」(同)
新聞紙を足の指で丸める
上半身の次に下半身の動きもチェックしておこう。 歩行にもうひとつ必要なのは、地面をつかんだり蹴ったりする力。これが弱いと、やはりふくらはぎや膝が痛くなる可能性がある。 電車やバスで揺られて倒れそうになったとき、反射的に足先に力を入れて踏ん張り、場合によってはつり革をつかんで転倒を免れる。 こうした「バランスを取る」動作は加齢とともに難しくなる。 この力があるかどうかを測る方法を紹介しよう。 はだしでイスに座り、床に広げた新聞紙を足の指先だけでクシャクシャに丸めることができるだろうか。丸めたら今度は指先だけで元に戻してみる。指先の力が弱いと容易でない作業だ。 石井氏が言う。 「指先の力に不安を感じたら、はだしの時間を増やすのがいいかもしれません。家の中でスリッパを履く生活を送っている方なら、できるだけはだしにしてみるとか。冬場は冷えますので、畳やじゅうたんの上だけに限定してもいいでしょう」 米川医師が補足するには、最近はソールに高反発素材を使って前への推進力を生み出す高機能のシューズが普及し、それを身に着ける陸上競技選手の中には地面をつかむ力が強くない人もいるそうだ。 指先の力をつけることは転倒予防にもつながるので、普段歩くときはそうした新素材の靴などは避けたほうがいいだろう。