安倍首相 伊勢神宮参拝後の年頭会見(全文1)改憲は期限ありきではない
人生100年時代到来は大チャンス
前回のオリンピックが開催された1964年ごろは、いわゆる団塊の世代が一斉に就職時期を迎え、高度成長の大きな原動力となった時代です。そうした背景の下で、わが国が世界に誇る国民皆年金、皆保険が形作られました。しかし今から2年後の2022年には、まさにその団塊の世代が75歳以上の高齢者となります。少子高齢化が深刻さを増す中で、このままでは若い世代の社会保障負担が大きく上昇することとなります。同時に、平均寿命は1964年と比べて15歳近く延びました。高齢者のうち、8割の方が65歳以上になっても働きたいという意欲を持っておられます。 人生100年時代の到来は大きなチャンスです。この機に、年齢に関わりなく意欲ある皆さんは働き続けることができる生涯現役の社会をつくり上げる、同時に一定以上の所得がある皆さんには年齢に関わりなくある程度のご負担をいただき、社会保障の支え手になっていただく。そうすることで若い世代の負担上昇を抑えながら、わが国が誇る社会保障制度を新しい時代へと引き渡していくことができると考えています。 さらにパートで働く皆さんにも、広く厚生年金の適用を拡大します。同一労働同一賃金の時代にあって、年金の世界においても非正規という言葉をこの国からなくしていく。この大方針の下に、現役世代の安心をいっそう確保する制度へと改革します。働き方の変化を中心に据えながら、年金、医療、介護、社会保障全般にわたって改革を進めてまいります。
全世代が安心できる社会保障制度に
少子化の時代にあって当然、子供たち、子育て世代への支援も充実します。子供たちの誰もが家庭の経済事情にかかわらず夢に向かって頑張ることができる、そういう社会を目指し、昨年の幼児教育・保育の無償化に続き、本年4月から真に必要な子供たちの高等教育の無償化を行います。令和の新しい時代、その未来をしっかりと見据えながら、全ての世代が安心できる社会保障制度へと改革していく、これが本年、内閣の最大のチャレンジであると考えております。 本年の干支は、庚子であります。ねずみは十二支のトップバッターであり、新しい芽が伸び始める年といわれています。そして庚には、これまでの継承の上に思い切って改革していく、そういう意味が込められています。新しい時代を切り開くような大きな改革を進めていく。庚子は、これまでもそうした節の年になってきました。60年前の庚子には、日米安全保障条約が改定されました。そして日本は東西冷戦を乗り越え、平和と繁栄を享受してきた。日米同盟はまさしくその後の時代を切り開くものとなりました。60年を経た今なお、わが国の外交、安全保障政策の基盤となっています。 他方、世界は今、大きな変化のうねりの中にあります。東アジアの安全保障環境がかつてない厳しい状況の下で、日米間の緊密な連携はもとより、ロシアや中国との協力関係を築くことは究めて重要です。北朝鮮と、日朝平壌宣言に基づいて諸問題を解決し、不幸な過去を清算して国交を正常化するとの方針も揺らぎません。最も重要な拉致問題の早期解決に向け、金正恩委員長と条件なしで直接向き合う考えです。中東地域が緊迫の度を高めており、現状、深く憂慮しています。事態のさらなるエスカレーションは避けるべきであり、全ての関係者に緊張緩和のための外交努力を尽くすことを求めます。