「お金持ち」に見える人がじつは「貧乏」で苦しんでいることもある「意外すぎる実態」
わたしたちはいつまで金銭や時間など限りある「価値」を奪い合うのか。ベストセラー『世界は経営でできている』では、気鋭の経営学者が人生にころがる「経営の失敗」をユーモラスに語ります。 【写真】人生で「成功する人」と「失敗する人」の大きな違い ※本記事は岩尾俊兵『世界は経営でできている』から抜粋・編集したものです。 貧乏は誰にでも忍び寄ってくる。 表面的には富裕層に見える人にも貧乏の影は迫る。 たとえば落ち着いた雰囲気の喫茶店で見かける、高級時計とオーダーメイドスーツで身を固め、ついでに髪の毛はジェルで固めた「デキる」ビジネスマン風の肉食系お洒落ゴリラ型の人にも、である。 上品な喫茶店に寄ってみると、こうした人が相手を捕食する勢いで熱心に営業している姿を時々見かけるだろう(本当のゴリラは草食動物なので不思議である)。 なお私は親切な肉食系お洒落ゴリラ先輩からオーダーメイドスーツを買うよう説得されたことがあったが、いかんせんスーツが絶望的に似合わない。首が詰まってシルバニアファミリー風になる。そこでついたあだ名が「スーパーラット」であった。 動物実験で突然変異的に生まれた天才ラットという意味だという。本物のラットの方が余計なことを喋らず可愛らしい分まだ救いがある。 さて、喫茶店で見かけるお洒落ゴリラ型の人は、会話から推測するに怪しげな実物商品や金融商品を売っている営業マンであることが多い。 だが、こうした「お洒落ゴリラ営業的な人」は、年収は高くてもクレジットカードの支払いで首が回らなくなっていることが多い。 彼らは極端な成果主義にさらされているために自爆営業も多い。顧客候補に食事を奢ったりプレゼントを用意したりと「儲かっているふり」をするための数々の小道具にお金が飛んでいく。 こうしたわけで、営業ゴリラ的な人は人に見えないところでは倹しい生活をしていることも多い。普段は四畳半の家で(なぜか住所だけは港区、目黒区、渋谷区あたりにこだわるのだが)激安ウィンナーを炒めたものをおかずに大量の米を平らげる。 週に一度、牛丼屋の店員の怪訝な顔を尻目に牛丼特盛に大量の紅ショウガを乗せて、一心不乱に飯を胃に詰め込むのが自分への最大のご褒美だったりする。 つづく「老後の人生を「成功する人」と「失敗する人」の意外な違い」では、なぜ定年後の人生で「大きな差」が出てしまうのか、なぜ老後の人生を幸せに過ごすには「経営思考」が必要なのか、深く掘り下げる。
岩尾 俊兵(慶應義塾大学商学部准教授)