「みどりの窓口削減」凍結は一時的?背景にJR東日本が本格化する“脱鉄道依存”
■ “稼ぐ場所”へと姿を変えつつある「みどりの窓口」 みどりの窓口の削減は、JR東日本が取り組む経営合理化の一環であることは言うまでもない。しかも、単に経費を削減するだけにとどまらない。それまでみどりの窓口だった場所が空きスペースになることで、飲食店やポップアップストアとして活用され、“稼ぐ場所”へと姿を変えることができる。 例えばJR京浜東北線の王子駅は、字面が「玉子(たまご)」に似ていることから、「幻の卵屋さん」を期間限定で出店して人気を集めた。このように、みどりの窓口を廃止することはJR東日本にとって経費削減と同時に賃貸収入という副収入も期待できる。 今回、みどりの窓口の廃止が問題化したのは、今年5月初旬。コロナが収束し、GWの旅行需要が高まったタイミングで起きていることを考えると拙速だったと言える。しかし、だからと言ってJR東日本が今後もみどりの窓口を維持していくのかと問われれば、残念ながら答えは「NO」だろう。 それを如実に示したのが、7月1日にJR東日本が100パーセント出資のJR東日本不動産を設立することを発表したことだった。 JR東日本は国鉄の資産を引き継ぎ、その有効活用を図ってきた。国鉄から引き継いだ社有地は簿価で2兆円超とも推定され、それらの大部分は車両基地や変電所、駅として使用されていた。そうした鉄道関連施設は時代とともに統合・廃止などの効率化を進め、多くの土地は遊休不動産になっていた。 また、高架化などを進めたことによって、線路の下に余剰スペースが生み出される。それらを有効活用することを見込み、1989年に不動産の開発・管理・運営を手掛けるJR東日本都市開発という子会社を立ち上げている。 同社はそれらを商業施設やオフィスとして賃料を稼げる不動産へと転換する事業を担っているわけだが、このほど設立が発表されたJR東日本不動産も目的は同じだ。 そのほかJR東日本は2005年にオフィスビル等の貸付業を主業務とするJR東日本ビルディングを設立しているほか、2021年には不動産ファンドビジネスに特化したJR東日本不動産投資顧問も立ち上げている。 不動産に関連する子会社・系列会社を多く抱えていることからも、JR東日本の不動産事業に対する意気込みが感じられる。そして、みどりの窓口を廃止して生まれた空きスペースは、次々と賃貸されていくことになる。 今回の一件は、以前からJR東日本が進めてきた“脱鉄道依存”のビジネスモデルを象徴させる出来事だったと言えるだろう。
小川 裕夫