生成AIが盛り上がる中でアップルが出した「Apple Intelligence」、ライバルのAIとは異なる4つのポイント
デバイス内の処理とプライベートクラウドへの拡張はシームレスに行われ、ユーザーはいっさいそこに関与する必要はない。プライバシーデータはクラウドで処理を行ったとしても漏れることがないように設計されている。 データセンター内で実行される大規模言語モデルのパラメーター数は発表されていないが、その性能はGPT-3.5-Turboなどと遜色ない性能を、より高いエネルギー効率で実現しているという。 では、どのようにしてプライベートクラウドを機能させるのだろうか?
プライベートクラウドの詳細は極めて複雑だが、ここでは可能な限りシンプルに説明することにしよう。 クラウドでの処理が必要な場合でも、デバイス上のAIによって送信する情報を細分化して送り、その結果をデバイス内で再構築する。例えば「娘の演劇を観に行くには何時に出発する必要があるか?」という前出の質問では、必要なスケジュール情報や位置情報を送信するが、その前に匿名化され、IPアドレスもたどれなくなる。 最後4つ目の違いは、サーバーを用いたクラウドAI規模のサービスを無料で提供できることだ。米ビッグテックの中で唯一、本業がハードウェア販売にあることも一因だが、自社開発のAIプロセッサーで構成するクラウドを運用するデータセンターが省電力設計で、それを100パーセント再生可能エネルギーで賄っている。デバイスとAI処理を分業することで負荷も下げることができ、結果として自社ハードウェアに内蔵する無料の機能として一体化できた。
ほとんどの機能をクラウドに依存し、無料モデルが中心のGoogleは論外としても、マイクロソフトのようにOffice 365という大きなの収益をもたらす製品を持つ企業でも、大規模なパラメーターのAIモデルを無料で組み込むことはできない。それゆえ、それを継続的にデバイスに付与する機能として使い続けられるというのは、大きなアドバンテージになりうるだろう。 ■“生成AIイノベーション”で独自の立ち位置に もっとも誤解してはならないのは、生成AIにおいてアップルがライバルに「宣戦布告」をしたわけではないということだ。彼らが開発しているのは、すべて最終製品であるiPhone、iPad、Macの機能を高め、使いやすくするためのものだからだ。