隣にいたボランチの“お手本”遠藤保仁の凄み。橋本英郎が語る、プロで生き残る術とは
プロで生き残る術を教えてくれた「ポジショニング」
「お前の特徴はなんだ?」 堀井さんがトップチームのコーチだったときか、サテライトのコーチだったときかは忘れましたが、サテライトチームの練習でこんな声を掛けられたのです。 「プロのレベルで胸を張れるほど突き抜けたスピードはないし、ドリブルで相手を置き去りにできるわけでもない。体の線も細くて対人プレーや空中戦が得意なわけでもなく、シュート力もそこそこ。そんな選手がどう生き残っていけるのか?」 堀井さんは、なかなか答えが返せない私に、「このままでは無理」という厳しい評価とともに、「ポジショニングっていうのもあるぞ」というヒントをくれました。 ポジショニングと聞いたとき、なぜそれが武器になるのかすぐにはわかりませんでした。 しかし、よく考えてみると、ジュニアユース時代から私が他人を出し抜く「これ」という武器を持っていたことはありませんでした。その中で、なんとかやってこられた。 プロの世界で特徴とするにはまだまだ不完全だけど、自分がどこにポジションを取れば自チームの中盤がうまく回るとか、ここに立っていれば相手は簡単に前線に飛び出せないとか、そういう工夫はずっとやってきたことでした。明日突然足が速くなることも、背が伸びることも、天才的なボールフィーリングが発動することもありませんが、ポジショニングの工夫はできます。 「戦術眼を磨いて、的確なポジショニングを取れるようになれば、プロでも戦える武器になるかもしれないぞ」 堀井さんは、当時柏レイソルでプレーしていた明神智和さんの名前を挙げて「身体のサイズも同じくらいだし、明神を見習ってみてはどうか?」とアドバイスをくれたのです。 そのときの私は、後に代名詞的ポジションになるボランチのポジションではプレーしておらず、堀井さんが指摘したように武器がなく、空いたポジションの穴埋めに使われる“器用貧乏”な便利屋プレイヤーでした。 明神さんのプレーに着目するようになって、自分が心掛けていた「考えて動く」 「先を読む」ということを武器に、攻守にわたって中盤を仕切るような影響力を発揮する選手がいることを知りました。 「目に見えづらいけど、ポジショニングは武器になる」 このときの気づきが、西野朗監督就任後のボランチ定着、ヤット(遠藤保仁)とタッグを組んだダブルボランチへとつながっていきました。