反韓デモの「ヘイトスピーチ」、何が問題になっているの?
「ヘイトスピーチ」が社会問題になっています。今月上旬、国会でも取り上げられました。 安倍晋三首相は7日の参院予算委員会で、「一部の国、民族を排除する言動があるのは極めて残念なことだ」と答弁。谷垣禎一法相は、9日の参院法務委員会で、「憂慮に堪えない。品格ある国家という方向に真っ向から反する」と述べています(引用は朝日新聞)。 どういうことでしょうか。 ヘイトスピーチとは、人種や民族、宗教などをおとしめたり、あるいはそれらへの差別をあおったりする憎悪の表現のことです。ヘイト(hate)は英語で憎悪を意味します。 最近、街頭でヘイトスピーチを堂々と叫んで歩くデモが、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)を中心に行われています。主な主張は、在日韓国・朝鮮人の永住権などを許さない、というものです。昨夏以降、竹島問題などで日韓関係が悪化していることもあり、動きが活発になっているのです。
対抗デモの動きも
東京の新大久保や大阪の鶴橋では、この団体によって「朝鮮人は出ていけ」という主張するデモが行われ、「殺せ」という内容のプラカードも見られるようになりました。 一方、これらのデモに対して抗議する対抗デモの動きも広がっています。在特会のデモが行われる日に、インターネットでの呼びかけに応えた人たちがデモに抗議するために集まっています。 新大久保でのデモに対し、宇都宮健児・前日弁連会長らが3月29日、東京弁護士会に人権救済を申し立てました。在日本大韓民国青年会やNGO在日コリアン青年連合も、4月に抗議声明を出しています。これら在日コリアン団体は、「在日特権」を主張する一部の集団に在日コリアンは困惑し、生活権を脅かされ、精神的苦痛を受けていると主張しています。
「言論の自由」か、法規制か
在特会側も、許可を受けたデモであるにもかかわらず暴行・妨害を受けたことや、「レイシスト(人種差別主義者)」と決めつけられたことが「人権侵害」に当たるとしてて、人権救済の申し立てを行いました。 「言論の自由」を在特会側は主張しています。警察は主張内容を理由にデモを不許可にすることはできません。しかしヨーロッパの多くの国ではヘイトスピーチ規制法があり、民族差別を公然と言うことは禁じられています。背景には、ユダヤ人差別の歴史があります。日本でもヘイトスピーチを法律で規制することが求められる一方、抗議デモのような市民の自発的な行動に期待し、法規制に慎重な意見もあります。