「東インド会社への復讐」画策した男の悲しい末路。世界初の空売りはどう行われた?歴史振り返る
でも、株式市場の重要な点は上昇することではない。株式市場の重要な点は、株の適正な価格を見極めることにある。つまり、企業の業績や世界情勢について入手可能なあらゆる情報を一番まともに反映した価格を見つけることだ。 明らかに、株式市場はときどきこの任務にみじめなほど失敗する。でも、市場に投資家が増えれば増えるほど――そして、とりわけ重要なことだが、彼らがより多くの情報を市場にもたらせばもたらすほど――市場は適正な価格を見いだすようになるだろう。
株価の下落時に利益を得る人間の存在を許すことは、投資家が詐欺的な行為を根絶したり、知られていなかった悪いニュースを広めたりするインセンティブを生み出す。これはよいことだ。 ■ル・メールのその後 イサック・ル・メールは自分のものだと主張するカネの件で当局と揉め続けた。ル・メールがカネを手にすることはなかった。ル・メールは海辺の小さな町で死に、次のような墓碑銘の刻まれた墓の下に埋められた。 イサック・ル・メール、ここに眠る。商人にして、世界のあらゆる地で活躍し、神の恩寵によりかなりの豊かさを知り、30年後、15万フローリン以上を失った(ただし名誉は除く)。
これは、死者がどれだけ大金を失ったか誇らしげに宣言する、世界で唯一の墓石かもしれない。おまけに、ちょっとした書き間違いもあるようだ。死ぬ前に書いた手紙で、ル・メールは自分が失ったのは160万フローリンだと書いている。墓碑銘にはゼロがひとつ足りない。
ジェイコブ・ゴールドスタイン :ジャーナリスト・作家