アメリカ人フードライターも「日本の魚焼きグリル」を絶賛…日本の「魚」へのこだわりは、世界から見てもスゴかった
魚をめぐる日本の特異性
魚を巡る話題は尽きない。例えば、資源問題。漁獲枠を巡る問題や養殖に成功した話題で注目を集めたマグロ、中国産が目立つようになったウナギ、希少性が伝えられるハマグリやアサリなど、さまざまな魚介類の資源減少が問題になっている。この季節は、サンマの漁獲高が話題に上る。 【写真】イギリスで日本の「カツカレー」が“国民食”になっている驚きの理由 資源の問題については、専門家たちによる著作がいくつも出ている。10年ほど前の本では、日本の漁業は獲り過ぎの傾向があり、欧米のように漁獲制限をすべき、という論調が多かった。しかし、そうした知見の積み重ねや現場の危機意識が高まったせいか、首都圏のローカルドキュメンタリー番組『食彩の王国』(テレビ朝日)を見る限り、時期や時間帯その他で制約を設け、持続可能な漁業を目指す産地は多くなったように思う。また、漁業資源の問題に取り組むシェフたちやくら寿司が、未利用魚の活用を打ち出している。供給が増え、店頭に並ぶ魚介類の種類が豊富になった地域もあるだろう。 食卓の魚介離れについては、私も過去に書いたことがある。農林水産省の「食料需給表」によると、2011年以降、日本人1人当たりの1年間の消費量は、肉類が魚介類を上回っている。水産庁ウェブサイトに掲載された「数字で理解する水産業」のグラフを見ると、1989年は肉類が25・8キログラムで魚介類が40キログラム弱と魚介類の消費がかなり多かったが、2018年は肉類が33・5キログラムで魚介類は23・9キログラムしかない。肉類が徐々に増えてきたのに対し、魚介類は約30年で消費量がざっと4割も減っている。 魚介類が消費されにくくなる事情は、消費者の1人としての実感からもわかる。魚介類は日持ちしにくいものが多いため、多忙な日々を送る人たちから敬遠されがち。肉類のほうが単価が安く冷凍保存もできる。また、調理方法のレパートリーも、肉類のほうがある人が多いのではないか? しかし日本は、世界でも稀な漁業資源に恵まれた国・地域であったからこそ、世界トップレベルの魚介消費大国になったのだ。そして魚介類への愛着が強いからこそ、さまざまなニュースが飛び交う。今回は、そうした日本の特異性を論じたい。