韓国人作家にノーベル文学賞 作品の翻訳家が語る"韓国文学"の魅力 「お薦め本」リスト付き
■翻訳者・出版社が手弁当で翻訳を刊行 その古川さんを、九州大学韓国研究センターが呼んで、九大西新プラザで開いた「韓国文学の魅力」と題した講演会でした。 古川綾子さん: 普通、ノーベル文学賞に選ばれると、「今年の(受賞)作家は、こういう人なんだ」「日本語に翻訳しなきゃ」と、そこから翻訳作業が始まることがほとんど。翻訳をして出版の作業を経て、実際に本の形になって販売されるのは最短でも半年とか1年ぐらいかかるんです。ただ、ちょっとこれは自慢と言うか、誇らしい部分でもあるんですけれど、実はハン・ガンさんの本はもうほとんど日本語に訳されていて、ずいぶん前から日本語で読める状態なんです。ノーベル文学賞を受賞したと同時に、皆さんに「これだけハン・ガンさんには素晴らしいものがありますよ」とお見せできる状況がもう既に整っている。これは、私たち翻訳者としてはすごく誇らしいことでもありますし、これからも努力を続けていかなきゃとも思っています。 古川綾子さん: ただ、最初からこういう環境があったわけではなくて、韓国文学はここ数年ブームのようにあちこちで取り上げていただけるようにはなったんですけれども、我々が手弁当で一つずつ地道な活動をずっと続けていって、いろんなところで少しずつ取り上げていただくようになったという経緯もあります。 本屋さんの棚には「アメリカ文学」とかはありますが、以前は「韓国文学」という棚はなく、韓国の本は「その他の文学」と分類されていたそうです。ところが2010年代に入ってから、各出版社で韓国文学のシリーズが出されるようになってきた、と古川さんは話していました。福岡市の出版社、書肆侃侃房(しょし・かんかんぼう)が2016年に刊行を開始した「韓国女性文学」14冊も例に挙げられました。 【韓国文学のシリーズ化】 2011年~ クオン「新しい韓国の文学」23冊その他多数 2016年~ 書肆侃侃房「韓国女性文学」14冊 2017年~ 晶文社「韓国文学のオクリモノ」6冊 2018年~ 亜紀書房「となりの国のものがたり」13冊その他作家シリーズ 2020年~ 新泉社「韓国文学セレクション」15冊