アダムバック、ポスト量子署名の研究がビットコインの署名を強めると推測
PQCの実用化は「少なくとも数十年先の話」
「暗号資産の父」としても名高い暗号解読者でサイファーパンクのアダム・バック(Adam Back)氏が、量子コンピューティングはビットコイン(BTC)ネットワークを強める可能性があるとの見解を示した。 この見解は、量子コンピューティングの計算能力の向上が暗号資産の脅威になるのではないかという懸念に一石を投じるものだ。 バック氏は12月21日のXにて、ポスト量子暗号(PQC)の実用化は「少なくとも数十年先の話」であり、ハッシュベースのポスト量子(PQ)スキームが採用されることはないだろうと予想した。 またバック氏は、「PQ署名の研究により、いずれは保守的でレビューの行き届いた、よりコンパクトな署名が生まれるだろう。ビットコインはこれらのスキームをオプションとして追加できる」と推測している。 署名とは、所有者であることを証明する数学的なメカニズムだ。 ビットコインの取引においては、ブロックチェーン上にはビットコイン所有者の署名が記録されており、送金時の取引で署名を行う際に、秘密鍵を使用して署名を行う。署名が一致する場合だけ所有者が書き換えられる仕組みであるため、署名が正しくないと、データを書き換えることができない。 なおブロックチェーンへの署名行為は、秘密鍵を持つ者のみが行える仕組みになっている。 グーグル(Google)は、新しい量子コンピューターチップ「ウィロー(Willow)」を12月9日発表した。 グーグルの発表によれば、「ウィロー」は現在の最速のスーパーコンピューターでも10の24乗年(1兆の1兆倍年)かかる標準的なベンチマーク計算を5分未満で実行できるという。 また、より多くの量子ビットを使用して拡張するにつれ、「ウィロー」はエラーを指数関数的に削減できるため、この分野が約30年間にわたって追求してきた量子エラー訂正に関する課題を解決できるとされた。 つまりこのようなコンピューターの前ではどのようなパスワードも安全ではなく、暗号資産やブロックチェーンの暗号化技術が短時間で解読できる可能性があると懸念され、ウィローが暗号資産領域において「量子コンピューターが暗号資産の脅威になるのではないか」という議論を巻き起こした。 しかし「ウィロー」のような量子コンピューターであっても、暗号化を即座に解読するために必要な規模やエラー訂正能力を備えていないようで、計算科学博士のインベスター・アッシュ(Investor Ash)氏は、サセックス大学の研究者の論文を引用し、ビットコインの暗号化を1日で破るには1300万量子ビットが必要だと研究者が見積もっていると述べた。 またイーサリアム(Ethereum)の共同創業者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏も量子コンピューターのリスクを軽減する方法を3月に提案しており、今後は各プロジェクトで量子コンピューターの脅威に対処するための変更が行われていくことになると予想される。
あたらしい経済編集部