電力需要増へパラダイム転換 供給力の安定確保が重要課題に 小山堅
データセンターや半導体工場の増加による電力需要の拡大は、日本の中長期的なエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」の議論にも影響を与える。 ◇縮小した電力需要が増加に転じる 脱炭素化とエネルギー安全保障の両立を目指すエネルギー転換を進める上で、深刻化する世界の分断、中東情勢などの地政学リスクの高まりなど、多様で複雑な問題が山積する。化石燃料の安定供給を図りつつ、クリーンエネルギー投資を加速化しなければならない。エネルギー転換を成功させるため、産業政策の活用も不可避だ。 こうした新情勢の中、新たにエネルギー政策上の重要課題として、改めて電力安定供給の重要性がクローズアップされている。日本でも2022年に現実の問題となった電力需給逼迫(ひっぱく)が重要な契機となり、電力安定供給確保は一気に重要性を高めた。電力需要の将来をどう見るかが大きなポイントとなる。 日本は経済成熟、人口減少という趨勢(すうせい)の中、エネルギー需要は低下するとの見方が主流だった。しかし、重要な変化が生じつつある。第一には、脱炭素化の影響がある。その推進のためには、エネルギー利用の中での電力化を推し進め、その電力をゼロエミッション(二酸化炭素排出ゼロ)電源で賄うことが最も効果的な処方箋となる。 日本もカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を目指す中、電力化の進展は避けられず、電力需要増大への圧力がかかる。第二には、新たな情報革命の影響がある。生成AI(人工知能)の急速な利用拡大とそれに伴うデータセンター(DC)や半導体工場の大増設などで、電力需要の大幅な増加を予想する声が高まっており、国が年度内の閣議決定を目指している第7次エネルギー基本計画の議論でも、中心的課題の一つとなる。 全国の電力需給を調整する電力広域的運営推進機関(OCCTO)が今年1月に示した今後10年間の見通しによると、23年度で8000億キロワット時まで縮小した電力需要(全国)は増加に転じ、33年度には約8400億キロワット時に拡大するとみる。昨年1月時点の見通しでは将来的に微減すると予測していたが、DCや半導体工場の新増設などを反映させた。DCの建設が先行する米国でも、米電力中央研究所が5月、電力需要が最大で年15%増加すると発表した。