電力需要増へパラダイム転換 供給力の安定確保が重要課題に 小山堅
◇原発活用など論点に もちろん、脱炭素化や新たな情報革命の影響については、いまだ不確実な要素も多く、実際にどの程度、日本の電力需要が増大するのかを正確に見通すことは容易ではない。省エネ効果でエネルギー需要がどう抑制されるのか、生成AIの利用拡大で逆にエネルギー・電力の効率的利用促進につながるのではないか、DC自体の省エネ改善をどう見るか、など先読みは難しい。 一方で「将来は低下する」との見方が支配的だった状況から「大幅に増加するかもしれない」という方向にパラダイムシフトしたことは重大だ。電力安定供給のための全体の投資決定判断から、建設・完成・操業に至るまでのリードタイムの長さを考えると、需要増大の可能性への対処は待ったなしの課題になるためだ。 しかも、その電力を安定的に手ごろな価格で、しかもゼロエミッションの電源で賄うことが必要になる。その主力として今後も大幅な増加が予想される太陽光・風力などの再生可能エネルギーについては、供給が天候などで変動し、供給適地が需要地から遠隔に多く存在するため、需要と供給をマッチさせるための電力連系線の強化が必要になる。そのため、米国などでは、新型の小型モジュール炉(SMR)などを含む原子力への期待や地熱発電などの再エネ活用にも注目が集まる。 日本でも、今後の電力需要増大に対応し、再エネの増強と出力調整への対応強化、原子力の活用などがエネルギー基本計画策定での議論の中心になるだろう。また、全体としての電力供給力(電源)の確保に向けた制度整備、再エネの出力変動を調整するための火力の活用とそのための燃料調達の確保が重要になる。また、発想を転換し、系統最適化の観点から電源の近くに電力需要施設を立地・建設することなども含め、総合的な見地からの電力安定供給対策が重要になるだろう。 (小山堅〈こやま・けん〉日本エネルギー経済研究所専務理事・首席研究員)