阪神の“守乱”は巨人との異例トレードで解消されるのか?
矢野監督は、シーズン終了のオーナー報告を終えたあとの会見で、「チームのエラー数は12球団トップ。そこは改善されてない。守備が課題として残った。誰か一人が頑張って消える数字ではない。全員の意識、準備、気持ちがあってこそ改善される。チーム全体で、首脳陣の立場からもしっかりとやりたい」と語ったが、来季のコーチングスタッフを見る限り、エラー数の多さの原因はコーチングスタッフの指導力とは関係ないと判断したということなのだろうか。 里崎氏は、こう提言する。 「阪神と巨人の差は、戦力差というより、大事なところでの自滅、ミスが影響した。この差を埋めるのには失策数を減らすだけでは意味がない。記録に残らないミスというものも目立った。そこをどう克服するのか。人も変わらない、指導者も変わらないのであれば練習の中身を変えるしかない。どれだけ守備練習に時間をさくか。特打ではなく、特守、特守でしょう。チーム全体の実践的な守備の連係にも時間を割くべき。チームとして打撃技術の向上と、守備の基礎技術を高めミスを減らすことのどちらが簡単かを考えてみて下さい。打撃にはセンスが必要で、練習量が必ずしも結果につながるわけではない。打撃練習の時間を増やしたからと言ってチーム打率をアップさせることにはならない。守備にもセンスがありますが、正しい練習をやればやるほど、結果につながる部分。極端な話、1日中、守備練習をやってもいいんじゃないですか」 今季は、試合前にシートノックをやらない機会も目立った。消化試合に入った段階でもアウェーでチームコンディションを優先してやっていない時もあった。矢野監督が言う「意識、準備、気持ち」という点では今季は十分ではなかった。 戦力は決して巨人に見劣りするものではなかった。特に投手力。エースの西勇輝は11勝5敗、秋山拓巳が11勝3敗と2人の2桁投手を擁し、抑えのスアレスは防御率2.24、25セーブをマーク。ブルペンも充実し救援防御率の3.39は巨人の3.60を上回った。巨人は菅野智之が14勝2敗の数字を残したが、続くのは9勝6敗の戸郷翔征で2桁勝利投手は一人しかいなかった。また4番の大山悠輔は、岡本和真と最後まで本塁打王争いをし、1番の近本光司を軸にした機動力も使え、盗塁数の80は巨人と同じくトップタイ。終盤に失速したが新外国人のサンズは、夏場まで高い得点圏打率を誇り、19本塁打、64打点。退団したボーアも17本、45打点で、巨人のウィーラーの12本、36打点、パーラの4本13打点の数字より上。打線のつながりや監督の用兵に大きな差が出たが、巨人の失策数は43で阪神の半分程度。両チームに7.5ゲーム差がついた要因のひとつに守備力の差があったことに疑いの余地はない。チームの戦力構造と甲子園をホームとする地の利を生かすには「打ち勝つ」よりも「守り勝つ」野球だろう。 守備力の改善に向けて阪神が春季キャンプからどういう取り組みを見せるのか。注目したい。