ソフトバンクGの個人向け社債、引受手数料下がる-過去10年で初めて
(ブルームバーグ): ソフトバンクグループが個人投資家向けに発行する普通社債の引受手数料が、過去10年で初めて下がった。投資事業の収益が安定し始め信用力が改善する中、社債発行にかかる費用は軽減しつつある。
ソフトバンクGの提出書類によると、同社が14日に発行する個人向け7年債5500億円の引受手数料は100円につき1円10銭。同じ年限と金額を個人向けに発行した3月の1円25銭から下がった。ブルームバーグの集計では、同社の個人向け普通社債の引受手数料は2013年以降、1円25銭だった。
ソフトバンクGは日本格付研究所(JCR)が4月に発行体格付けを10年超ぶりに「A」に上げ、5月にはS&Pグローバル・レーティングが「BBプラス」に引き上げた。大和総研の大橋俊安理事は、発行体の信用力が高まれば引き受けリスクと投資家への販売コストが減少するため、手数料は下がる傾向にあると話す。
日本企業の信用力は近年上昇傾向にある。JCRによる格上げ数は23年に99と、22年の94、21年の50から増えた。格上げに伴い発行コストが下がっていけば企業が社債で資金調達する動機付けとなる。投資家にとってはデフォルト(債務不履行)リスクが低下することになり、日本銀行の金融政策正常化で金利が上昇する環境でも投資しやすくなる。
一方、手数料は一度引き下げられるとその水準で定着する慣習がある。インフレ環境下、手数料収入が減れば証券会社の引き受け審査やプライシングなどの業務の質低下につながりかねず、市場の門番(ゲートキーパー)としての役割に悪影響を及ぼすリスクもある。
大和総研の大橋氏は、手数料の低下傾向は引き受け競争の激化も一因だとみている。日本では格付けが「A」格以上でないと社債を発行しにくい傾向があるとし、証券各社は格付けが相対的に低い企業を積極的に開拓し、市場の裾野拡大による収益機会の確保に努めるべきだと指摘した。