徐々にベールを脱ぐRapidus新工場、最新の状況は?
半導体サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2024」(12月11~13日、東京ビッグサイト)が2024年12月11日に開幕し、会場内に設けられたSuperTHEATERで行われたオープニングセッションには官民の主要メンバーが登場した。同セッションでは、Rapidus幹部による工場建設の現状報告に注目が集まった。 Rapidusが建設するIIM-1の完成予想図[クリックで拡大]
政府は今後も半導体投資を全力でサポート
内閣総理大臣の石破茂氏はオープニングセッションにビデオメッセージを寄せ、「日本の未来を救う、かつての活力を取り戻すためには地方創生2.0として、地域全体の活性化と経済全体の活性化を同時並行で進めていくことが重要だ。半導体はそのカギになるものだと確信している」と語った。 九州フィナンシャルグループの試算によれば、半導体関連産業の集積が進む熊本県への波及効果として、2030年に1人当たりの雇用者報酬が年間で平均38万円の増加につながるという。石破氏はこの試算に触れながら、「半導体への大規模投資は地域への大きな波及効果をもたらす。そういった半導体投資の効果を全国的に展開していかなければならない」と話した。 政府としても2030年度に向けて半導体やAI(人工知能)分野に10兆円以上の公的支援を行い、さらに10年間で50兆円を超える官民投資を引き出すための新たな支援フレームを策定する方針を示している。 「政府として半導体投資を全力でサポートしていく。日本には、製造装置や素材企業が数多く立地しており、半導体のグローバルサプライチェーンの中核的な役割を担っている。世界の半導体企業が日本に立地することが世界的に見ても、半導体の安定供給、半導体産業の発展に大きくつながっていくと考えている」(石破氏)
半導体業界で覆りつつある2つの常識
自由民主党 半導体戦略推進議員連盟 名誉会長として登壇した前衆議院議員の甘利明氏は「今回は諸般の事情で名誉会長としてお邪魔している」と切り出しながら、「本来は政府与党、自民党なら政務調査会の経済産業部会などを中心に政策を組み立てているが、半導体に限っては議員連盟が作って、政府の政策になってきた歴史がある。なぜそうしたかといえばスピード感だ。正式な手続きを踏んでいては間に合わない。1分1秒でも早く政策を実現するために議員連盟が主導して提言してきた歴史がある」と話した。 また、甘利氏は、現在の半導体産業におけるTSMCの大きな存在感の大きさを念頭に、「半導体の世界で2つの常識が覆されようとしている。その1つは、開発や設計を行うファブレスが世界を仕切るという常識だ。一番大きなリスクは、どんどん進化して難しくなる設計を、歩留まりを高めて正確に商品として作れるファウンドリーがないということだ。TSMC以外に付いてこれるところがない。量産技術では7nm、5nmまではTSMCに付いて行けても、3nm、2nmになったらTSMC以外は付いて行けない。TSMC一社に全てのファブレス企業が委託しなければならない時代になるということだ。これは世界の大きなリスクだ」と述べた。 甘利氏はTSMCと同等、もしくはTSMCに近い生産能力を持つファウンドリーが誕生することが世界にとってのリスクの軽減につながるとし、「Rapidusの存在意義はそこにある」と語った。 甘利氏が言及したもう1つの常識は前工程と後工程の関係だ。「これまで半導体の技術進化、付加価値の加速は前工程が担ってきたが、前工程で付加価値を積み上げていくスピードが遅くなっている。後工程では3次元化し、チップレット化が進んでいく。3次元になればロジックとメモリの距離が近くなり、配線も増えていく。スピードが上がり、エネルギーの使用量は下がっていく。後工程は半導体の信頼性を高める役割に加えて、前工程以上に付加価値を作っていくという変化に直面している」(甘利氏)