長距離ドライバー「年収700万円以上に」 業界大手発表の裏で、政府がもくろむブラック運送会社の徹底排除
2024年問題の影響
現在のドライバー不足は、「今この瞬間にもドライバーが不足しているから」という切迫した事情よりも、近い将来への不安感(ドライバーの高齢化など)や、あるいはよくも悪くも2024年問題の影響によって生じていると、筆者は考えている。 よいほうの影響から考えよう。日東物流(千葉県四街道市、菅原拓也社長、従業員数107名(2023年12月現在))は、ドライバーの長時間労働是正や収入アップなどの待遇改善を実現したこと、あるいは同社が取り組むホワイト物流への取り組みなどが評価され、若手や未経験者を含むドライバー採用を着実に実現できている。 日東物流の場合、2024年問題以前から、事業改革に取り組み、不採算荷主からの撤退や、運賃値上げ交渉を行ってきた。その取り組みは、さまざまなメディアで取り上げられている。2024年問題という逆風が吹く今、日東物流の地道な取り組みが内外から評価され、逆に日東物流においては追い風となっているのだろう。 ただし一方で、2024年問題が逆風となり、悪い方向へと作用している運送会社もいる。むしろ、こういった運送会社のほうが、業界では多いのではないか。 1.2024年問題によって残業に上限が課されたことによって、ドライバーの残業時間が減る。 2.残業が減り、収入が減るため、ドライバーが離職してしまう。 3.ドライバー採用をかけるも、以前よりも収入が減っているため、応募状況も芳しくない。 絵に描いたような負のスパイラルである。
運送会社経営者がまず行うべきこと
ちまたからは、「2024年問題によって残業ができなくなってしまったから、給料が減ってしまった」というドライバーやら運送会社経営者の恨み節が聞こえてくる。 こういった恨み節は、テレビ・新聞・ラジオ・雑誌などでも、最近報道されるようになった。ドライバーが嘆くのはわかるし、同情する。だが、運送会社経営者が嘆くのは、少し違うのではないか。「社長にさ、『残業ができなくなったんだから、残業代が減って、給料が減るのは仕方ないだろう』ってこんこんと説得されてさ……」などという話も聞こえてくるが。 そもそも2024年問題は、以前からわかっていた話である。2019年に働き方改革関連法が施行された時点で、「ドライバーは長時間労働が常態化しているから、5年間猶予をあげるね」といわれていたのだ。その間に、荷主と価格交渉を行い、長時間労働の原因となる自主荷役や待機時間の是正を荷主に提案することはできたはずだ。 「それが難しいんだよ」 それもわかっている。だが、実際にそれを成し遂げた運送会社もいるし、現在進行形で取り組んでいる運送会社も多い。2024年問題に対し、前向きに取り組んでいる運送会社の経営者と話していると、皆さんが口をそろえていう言葉がある。 「コンプライアンス違反を行う運送会社を野放しにしないでほしい。正直者がバカを見るような結果は許せない」 2024年問題に向き合う勇気と行動力を持てず、コンプライアンス違反を行う事業者や、あるいはその痛みをドライバーに押し付けることで一時しのぎをしようとする運送会社経営者がいる限り、運送業界はよくならない。ある運送会社役員は、このようにいった。 「極論ですけど、全国の運送会社6万3000社が、皆一斉に運賃値上げ交渉をし始めたら、荷主との交渉だってもっと楽なはずです。絶対必要なはずなのに、運賃値上げ交渉を行わない運送会社がいるから、なんとか値上げせずに済ませようという荷主が生まれるんですよ」