松岡修造さんが考える「日本の子どもの弱点」とは? 最後までやり抜く力を育てる親の態度
日本人の弱点を克服しよう
プロは1年のうち10カ月ぐらい海外を転戦します。飛行機のチケットやホテルの予約をとるのはもちろん、現地での練習相手を探すのも自分でやらなければなりません。そこで乗り越えなければならなかったのは、コミュニケーションの壁でした。 僕も含めて、日本人は自分の意見を主張したり、未知のことにチャレンジするのが不得意な人が多いようです。国民性や教育によるのかもしれませんが、言われたことを忠実にやるのは得意なので、「間違ってはいけない」「失敗したら怒られる」という気持ちが強く働きがちです。 また、日本では遠慮したり周囲に気をつかったり、控えめであることが美徳とされているところがあります。それも良さではあるのですが、世界で活躍するために必要な、自分の頭で考え、やりたいことに対して自ら道を作っていく力は育ちにくい。 世界に出てテニスをやっていくには、そうしたメンタリティを変えなければ道はないと、当時のメンタルトレーナーから、はっきりと言われました。でも、性格はそう簡単には変えられませんし、考え方を変えればいいと言われても、難しい。
コミュニケーションは能力アップのカギ!
そこから先のメンタル強化は、選手それぞれに工夫が必要で、どうしていくかは本人次第です。試行錯誤する中で、「具体的に行動するとメンタルも変わっていく」ということを、僕は海外転戦中に実感しました。 現地で練習相手を探すとき、できれば自分より少しでも上手な選手とやりたいのですが、最初は声をかけても100%断られていました。熱意を伝えようと、つたない英語で必死にお願いしても、相手にしてもらえません。 そこで僕は、相手の練習や試合をよく見ていて、たとえば「あなたのフォアハンドはすばらしく、僕は憧れている。少しでいいから、僕に時間をもらえませんか?」と、相手の国の言葉で話しかけるようにしました。 すると、だんだん「OK!」と言ってもらえるようになりました。それからは、少しずつ海外の選手とコミュニケーションがとれるようになり、テニスがますます好きになって実力がつき、試合にも勝てるようになったのです。