いまの中国には夢も希望もない…若者の貧困化を止められない「習近平政権の大失策」
将来を諦める中国の若者たち
このところ、中国で市民を狙った無差別の暴力事件が相次いでいる。 主な要因の一つは、中国の経済環境の悪化で人々の不安心理が増幅していることにありそうだ。これまで経済成長を支えてきた不動産バブルが崩壊し、中国経済の成長は限界を迎えている。特に、若年層の雇用機会は減少し、経済格差は拡大した。低賃金への不満や失業の不安などの要素が重なり、中国の社会心理状況は不安定化しているといえる。 【写真】これはヤバすぎる…!中国で「100年に一度の大洪水」のようす 中国国内のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)への投稿内容では、失業、就職活動の不調、人生の不安などに関する投稿が増加傾向という。いわゆる“寝そべり族”と呼ばれる人たちは、自助努力で良好な将来を目指すことは困難だと考え、何もせず無言で抗議しているともいえるかもしれない。将来に明るい見通しを持てないため、人生の先行きを諦める若者も増加しているようだ。 社会心理の不安定化を食い止めるため、中国政府は“共同富裕策(国全体で共に豊かになる)”を打ち出し、若年層などの雇用対策も拡張した。 それでも、今のところ目立った成果は出ていないとされている。バブル崩壊で将来の夢を持ちにくくなると、どうしてもリスクに過敏になり現状維持を重視する個人や企業が増える。そうなると、新しい発想の実現(イノベーション)を目指すことも難しい。 不安定な社会心理を象徴するように、10月頃から外国為替市場では人民元の下落が鮮明だ。 政府・中央銀行は、人民元のレートが大きく下落しないよう管理しているようだが、足元で人民元の売り圧力はかなり強い。今後、米国のトランプ政権の対中締め付け策も強くなるとみられる。中国経済の低迷が長期化し、人々の心理状況がさらに悪化することが懸念される。
先行き不安を反映した人民元
中国人民銀行は毎営業日、その日の取引の基準となるレートを日本時間10時15分頃に公表する。基準為替レートは、中国政府の為替政策(人民元安、人民元高のどちらを重視しているかなど)を確認するうえで重要だ。足許、中央銀行は人民元の下落を阻止するため、実勢よりも強め(ドル安・人民元高)に基準レートを設定している。政府は、1ドル=7.20元を下回る水準に人民元を誘導しようとしているようだ。 ただ、実際の取引では、1ドル=7.20元を上回る(基準レートよりドル高・人民元安の)状況が続いた。12月3日、上海外国為替市場では一時、1ドル=7.2791元、約1年1カ月ぶりの水準まで人民元は下落した。 元安の原因の一つは、米国の政策リスクの高まりだ。11月25日、米次期大統領に就任予定のドナルド・トランプ氏が中国に10%の追加関税をかける考えを示した。今後の物価上昇警戒感から、米金利には上昇圧力がかかりやすくなっている。 また、中国国内では、不動産バブル崩壊でデフレ懸念が上昇中だ。 新築住宅の価格は下落基調が続いている。今のところ、不動産市況が本格的に下げ止まる兆しは見えない。土地利用権の譲渡益減少から、地方政府の財政は悪化傾向だ。住宅ローン返済負担、住宅や株式の価値下落で、負の資産効果も重なり個人消費は弱い。中国の国債流通利回りは低下し、米中の金利差は拡大した。 中国の社会心理が不安定化したことも、人民元売りの材料の一つになったとみられる。 11月、中国では自動車の暴走などいくつかの暴力事件が起きた。こうした事件が報じられるたび、人民元の売り圧力は増大したようだ。政治、経済の両面で中国の先行き見通しが悪化する展開(チャイナリスクの上昇)を警戒し、ドルを買って人民元を売りに回る投資家は増加したとみられる。