女児刺殺は17年越しの検挙 未解決事件なぜ急展開 各地の警察が注力でも「初動が重要」
17年間未解決だった兵庫県加古川市の小2女児刺殺事件で、兵庫県警が先月、殺人容疑で勝田州彦(くにひこ)容疑者(45)を逮捕した。殺人など重大事件の公訴時効が撤廃され、警察当局は近年、体感治安に悪影響を及ぼす長期未解決事件に力を注ぐ。だが、証拠が乏しく、犯行の立証が困難なケースも少なくない。防犯カメラや科学捜査の発展で未解決の重大事件は減少傾向にあるが、捜査幹部は長期化する場合も見据え、「初動捜査が重要になる」と話す。 殺人や強盗致死罪の時効が撤廃されたのは平成22年。これに合わせ、長期未解決事件を担う専従捜査班を設置する動きが各地で広がった。 21年11月に警視庁が全国の都道府県警で初めて設置。23年春には大阪府警や京都府警が、殺人などを取り扱う捜査1課内に専従捜査班を設けた。 大阪府警によると、捜査班では事件記録を改めて精査し、最新の科学技術を用いた資料の再鑑定や関係者への再聴取などを実施。主要駅などで情報提供を呼び掛ける広報活動も行っている。 「科学捜査の技術は1年単位で向上する。昔では分からなかった微物が検出できるようになり、長年経過して解決につながることもある」。捜査幹部は、継続捜査の重要性をこう説明する。 DNA型鑑定の個人識別の精度は、平成31年に「565京人に1人」まで向上。防犯カメラなどの古い画像の解析技術も進化しており、科学捜査によって停滞していた捜査が急展開するケースもある。 しかし、こうした証拠類は、犯行を裏付けていく際の資料となることが多く、その場合は容疑者確保が前提となる。警察庁は19年に捜査特別報奨金(公的懸賞金)制度を開始。解決に結びつく情報の提供者に、最高で300万円の懸賞金を出している。 平成22年に神戸市北区で高校2年の男子生徒が殺害された事件では、当時17歳の元少年が周囲に関与を示唆する発言をしていたとの情報が兵庫県警に寄せられた。生徒の衣服から検出されたDNA型が元少年と一致し、県警は令和3年に殺人容疑で元少年を逮捕。情報提供者に300万円が支払われた。 ただ、長期未解決事件は有力な証拠に乏しいことが多い。近畿大の辻本典央教授(刑事訴訟法)は「発生から時間がたっており、新たな物証を見つけるのは難しい。自白偏重にならないように、それまでに収集した証拠と供述を突き合わせ、整合性を評価していくことが大切だ」と指摘する。
一方、ある警察幹部は鑑定技術の向上や防犯カメラが普及している現状を踏まえ、初動捜査の重要性を説く。「客観証拠が多ければ多いほど、自白に頼らない立証が可能になる。発生当初にいかに多くの証拠を収集できるかが勝負だ」(木下倫太朗、堀口明里)