”育ての親”水谷実雄氏、引退した前田智徳氏との思い出を語る
■“第二の前田”を育ててほしい マツダスタジアムで最後の対戦の時、挨拶にきてくれたなぁ。「前田、もう苦しまんでええのぉ」と声かけたら、アイツ、オレの胸にすがってポロポロ泣きよった。野球に対して真面目なヤツやな。謙虚。謙虚だから練習する。だから上手くなる。いっぱい引き出しも持っとるやろ。苦しい時にこうしたらええとかな。これからが野球人生は長いんや。これで終わっちゃいかん。アイツは、いいの(選手)を作らんといかん。 人間が人間を作るのは本当に難しい。特にバッティングは。でも次の前田を作らんといかん。アイツならできる。立派な指導者になれる。ワシも根本さん、広岡さん…色んな人に教わった。若い時は「そんなんわかっとるわい」と流したりすることもあったけど、でもどこか頭の片隅に残っとって、自分が教える立場になると、ちゃっかり思い出して使っとった。自分のオリジナルも混ぜてな。前田も何かの時に思い出してくれたら嬉しいのぉ。 (聞き手・文/土井麻由実) ■水谷実雄(みずたに・じつお) 1947年11月19日生まれ。宮崎県串間市出身。宮崎商高から1965年に投手としてドラフト4位で広島に入団。その後野手に転向。山本浩二、衣笠祥雄らとともに広島黄金時代をけん引。その後、阪急へトレードで移籍し、1985年に現役を引退。コーチとして阪急~広島~近鉄~ダイエー~中日~阪神と6球団を渡り歩き、江藤智、前田智徳、金本知憲(広島)、中村紀洋(近鉄)、城島健司、松中信彦(ダイエー)らを育成。2013年オフに阪神を退団。