“たたかう庶民派”松原仁氏 無所属の“危機感”、新天地開拓も「偶然」が追い風に 東京26区【衆院選2024】
■陣営「ただ者ではない、気迫と運動量」 68歳でも磨きがかかる選挙活動 地理を把握することからスタートした目黒区では、とりあえず街中に飛び込む“どぶ板作戦”で着実に知名度を広げた。10月に入ると、目黒区を重点的に朝2時間と夕方4時間、あわせて1日6時間にもわたって駅前に立ち続けた。通勤時と帰宅時の両方に立つことで、有権者の印象に残す作戦だ。土日になると、長い時には1日4時間も自転車で選挙区を回った。実際、目黒区に住む筆者の知人も「あの人、いつもいる。ずっといる人だ」と話していて、こうした地道な運動が新天地でも「見たことがある、名前を聞いたことがある」という有権者を増やすことにつながり、着実に票が積み重ねられたと考える。松原氏の選挙戦を支える陣営の責任者ですら「ただ者ではない気迫と運動量。68歳の現在でも磨きがかかっている」と舌を巻いていた。 選挙期間中の取材では、松原氏本人からも“無所属”としての危機感を垣間見ることがあった。結果的に、その不安をパワーで押し切った選挙戦となったのではないだろうか。 ■「じんじんソング」や突如バズったSNS ユニークな選挙スタイルとは 松原氏の選挙スタイルは、選挙カーでの活動にも特徴がある。「ジンジンジン 松原仁」という軽快なメロディ。大田区や目黒区、そして前回対象だった品川区に住む人なら、一度は聴いたことがあるのではないだろうか。この「じんじんソング」に陣営は絶大な効果を感じているといい、まだ選挙権を持たない子どもでさえ、松原氏の名前を覚えるほどだという。 このような地道な選挙活動に加え、今回SNSも追い風となった。近年、SNSを利用しての選挙戦はメジャーであるが、松原氏の投稿は、特に反響の大きさが際立つ。これについて陣営に聞いてみると、きっかけは「偶然」のものだったという。一般の“国会ウォッチャー”によって偶然SNSに投稿された松原氏の論戦の動画が、60万回以上再生されるなど大きく拡散。これをきっかけにSNS上で松原氏への注目が跳ね上がったと陣営は分析する。公示日を前に投稿された決意表明は、なんと1万いいねを記録。公示前の1か月間にされた選挙活動に関する投稿では、平均約7000いいねを獲得するなど、注目度の高さが伺える。街頭活動中にも支援者から「投稿を見た」と声を掛けられるなど、陣営も反響を実感するほどとなり、SNS戦略をさらに強化することへと繋がった。偶然注目を浴びたSNSが起爆剤となり、無所属の壁を乗り越える一手となったように思う。