「日本でこんなに人気になるとは…」韓国ドラマはなぜ世界的ヒット連発? 始まりは20年前「冬のソナタ」の熱狂 自信を持った制作陣、ネトフリも追い風に
その中国での好景気も長くは続かない。2016年に韓国が米軍の迎撃システムの配備を決定すると「限韓令」が出され、韓国ドラマの放送が制限されてしまう。再び危機に見舞われたが、今度は動画配信大手「ネットフリックス」が放っておかなかった。同年、韓国に支社を設立。毎年数百億円規模の費用を注ぎ、優秀な人材を確保してオリジナルコンテンツを制作し世界配信に乗り出した。 ▽IPが生んだ「愛の不時着」 韓流は、動画配信サービスという新たな大波に乗る。ネットフリックスが韓国に進出した2016年、放送局主導のドラマ作りから脱却する制作会社スタジオドラゴンが設立された。やがて「トッケビ」「愛の不時着」などの大ヒットで知られるようになる。 親会社の大手エンターテインメント企業「CJ ENM」のIP(知的財産権)戦略担当の李起赫(イ・キヒョク)局長によると、当時は国内放送に伴う広告収入が収益の柱だったが、インターネット広告の影響もあり市場は縮小していた。「放送で得られる収益は限界があり、このままではクオリティーも上げられない。作品で得た収益を次のコンテンツに投資する好循環を生み出すには、スタジオを設立し知的財産権を確保する必要があった」と語る。
▽「一つの文化」のように広がる韓流 スタジオドラゴンは企画から制作、流通までを一手に担って主導権を持ち、それまでテレビ局の下請けのようだった立場を逆転させた。脚本家や監督ら約250人と契約を結び、創作のための一定の前金を渡すなど、優れたコンテンツを生む体制も整えた。 放送局中心のドラマ制作から解放されたことで、既存のジャンルにとらわれない発想も可能となり、ネットフリックスから投資を受けたスケールの大きな制作も実現した。北朝鮮エリート将校と韓国の財閥令嬢の純愛という南北問題とラブストーリーを掛け合わせた「愛の不時着」もその一つ。2020年に日本で配信されると冬ソナ以来の韓国ドラマブームを再燃させた。 「愛の―」はもともと韓国の視聴者をターゲットに作られ、李局長によると、これまで海外で成功した作品の大半が国内の視聴者を意識したものだという。そうした韓国ドラマが世界で視聴者を獲得する理由を、CJ ENMの徐章豪(ソ・ジャンホ)常務は「人と人との関係性を特によく表し、温かい情緒の描写に優れている」と分析する。