「日本でこんなに人気になるとは…」韓国ドラマはなぜ世界的ヒット連発? 始まりは20年前「冬のソナタ」の熱狂 自信を持った制作陣、ネトフリも追い風に
雪景色を背景に男女の純愛を描いた韓国ドラマ「冬のソナタ」は、日本で韓流ブームに火を付け、ドラマの国際市場を切り開いた。〝ヨン様〟が熱狂を呼んだ初放送から20年。韓国ドラマは日本に浸透し、今や世界的な人気を誇る。その成功への軌跡をたどると、決して順風満帆ではなく、政治の荒波にもまれながら挑戦と進化を続ける姿が見えてきた。(共同通信=楡金小巻) 「梨泰院クラスの主役、パク・セロイ」が語る、韓国作品がヒットする理由 パク・ソジュンさん ラブコメから始まり「視聴率キング」へ、ハリウッド映画出演も
▽「こんな世界があったのか」目からうろこ 2003年4月3日夜、北海道室蘭市に住む小野ひろみさんは、帰宅後にたまたまつけたNHKのBS放送に心を奪われた。「何だろう、ずいぶんきれいなドラマだな」。当時は仕事に子育て、親の介護と忙しく、ほとんどテレビを見ない生活だったが、冬ソナの初回放送で美しい映像と音楽に引きこまれた。 「翌日から次の放送を逃すまいと、新聞のテレビ欄を毎日チェックしました」 それまでエネルギッシュで劇的な展開の韓国映画は見たことがあったが、ドラマは初めて。「冬ソナは柔らかく叙情的。俳優さんもナチュラルメークで、声がきれいで美しい。こんな世界があったのかと目からうろこが落ちる思いで、見事にはまりました」 同僚や友人にも勧めると次々にはまった。小野さんはドラマを見るだけでは飽き足らず「この国をもっと知りたい」と日韓の近現代史を学び直し、仲間と韓国語も勉強。冬ソナを通じて世代を超えた友人と出会い、何度も渡韓した。
「冬ソナは私の人生を彩り豊かにしてくれた。韓国ドラマ熱は今なお冷めません」 ▽手紙ドカドカ2万通「尋常じゃない」 NHKのチーフプロデューサーを務めた小川純子さんによると、NHKの海外ドラマはそれまで「アリー・myラブ」「ER 緊急救命室」など欧米作品が中心で、アジアのドラマシリーズ自体が初めてだった。 中国や香港、台湾の作品も検討し、日本の視聴者になじむ作品の選考が続いた。「その中でもユン・ソクホ監督の冬ソナは演技が非常に抑制的で、自然の情景描写が美しい。『これなら日本の視聴者にも見てもらえるのではないか』と選ばれたそうです」 視聴率は人気シリーズ「ER―」を1カ月で抜き、視聴者から手紙が続々と届き始めた。「通常なら1週間で1、2通のところ1年で2万通。手紙が入った段ボールがドカドカと運び込まれ、尋常じゃなかった」 手紙は60代以上からも届き、中には筆でしたためられた巻紙も。ドラマの感想に加え「戦争で生き別れになった初恋や、夫とのなれそめなど、ご自身の思い出を語る方が多かった。冬ソナは、誰しもが心にしまった思い出の鍵を開けるような作用があったのではないでしょうか」。冬ソナは「恋愛ドラマを見る60代以上の女性」にも光を当てた。