非電化なのに「電車が走る」 架線は“ほんのちょっと”だけ!? 関東の行き止まりJR線に乗ってみた
列車番号末尾に「M」の表示が
EV-E301系は、電化区間である宇都宮~宝積寺間の約11kmを電車として走り、非電化の烏山線内約20kmを蓄電池電車として走ります。このため宝積寺駅と烏山駅に、充電用の架線が設置されています。EV-E301系は2017年までにキハ40形を置き換えました。 なお、EV-E301系は現在まで東北本線と烏山線にのみ投入されていますが、交流電化版のEV-E801系電車が2017年に開発され、奥羽本線と男鹿線で使われています。 「非電化区間の電車」を体験すべく、筆者(安藤昌季:乗りものライター)は2024年6月の土曜日、宇都宮駅を7時11分に出発する普通列車325Mに乗車しました。列車番号末尾の「M」は「電車」の意味です。 EV-E301系は2両編成で、3扉ロングシート車。変わったところといえば、車端部のモニターで蓄電池電車の仕組みを映像化しているほか、機器室がある点です。 乗客は50人ほどでした。東北本線内では岡本駅に停車し、烏山線の起点である宝積寺駅には7時24分着。宇都宮駅から2駅ですから、東北本線内だけの利用も目立ちます。ここでは2分停車しました。 停車の理由は充電するためです。充電が終わるとパンタグラフを下げ出発。非電化区間でも気動車のようなエンジン音はせず、電車そのものの乗り心地でした。 ちなみに列車内には「七福神」のイラストがあり、烏山線内の各駅にも駅名の由来を表した七福神の看板があります。鳥山線は固有の駅が7つあり、かつ「宝積寺」「大金」など、縁起のよい駅名があるからです。 4つの橋を渡り7時32分、下野花岡駅に停車。大穀倉地帯にある駅で、農家の生活などが展示された「高根沢町歴史民俗資料館」が、駅から徒歩20分の距離にあります。七福神は長寿の神である「寿老人」が当てはめられています。
終点側の集電設備は?
続いて7時36分に仁井田駅着。かつては列車交換を行っており、構内は広めです。10人ほど下車しました。駅の周辺には江戸時代に宇都宮藩主が作らせた、市の堀用水が流れます。七福神は清廉度量の神である「布袋尊」です。 7時41分に鴻野山駅着。周辺に6~7世紀の台新田古墳群があり、不老長寿の神である七福神「福禄寿」が当てはめられています。 烏山線の中心駅である大金駅には7時49分の到着。ここで20人ほどが下車しました。列車交換も行われます。駅名にちなんだ大金神社が駅舎正面右側にありました。かつては有人駅で、「宝積寺~大金」の乗車券はよく売れたそうです。駅の七福神は商売繁盛の神「大黒天」です。 7時53分着の小塙駅は、「栃木の自然百選」に選ばれた荒川河岸段丘上にある駅です。駅の七福神には漁業の神「恵比寿神」が当てはめられています。 7時58分に滝駅に到着。駅の南側に高さ20m、幅65mの「龍門の滝」があり、付近には桜と滝を合わせた撮影スポットがあるようです。水神にして農業神である「弁財天」が当てはめられています。 8時2分、終点の烏山駅に到着。駅のごく一部だけに架線が設置され、到着次第、充電のためにパンタグラフが上がりました。立派な駅舎のある有人駅で、「みどりの窓口」機能を持つきっぷの自販機や、「だいすき! からせん」と書かれた烏山線のアピール看板もあります。駅の七福神は災いを退ける神「毘沙門天」でした。 パンタグラフを上げたEV-E301系は電車そのものですが、架線は車両1両分ほどの長さで、それ以外の部分は広く空が見えるのが、烏山駅の個性と感じました。
安藤昌季(乗りものライター)