SNSで質問に疑問の声が出た大坂なおみ会見にジャーナリズムはなかった?
とはいえ、さすがに公式会見のような場で、「監督の好きなレストランは?」という質問が飛ぶことはない。そこは暗黙の了解だがーーいや、それも、取材対象者次第か。カブスのジョー・マドン監督ならおそらく、喜んで答える。おすすめメニューも教えてくれる。 試合後にそんなやり取りが交わされることはないものの、エンゼルスのマイク・ソーシア監督も、上機嫌のときなら自分から脱線する。13日の試合前も、大谷翔平が手術をするのかどうかーーといったシリアスな続報を求めて集まった日米メディアを前に、突然こう言切り出した。 「みんな、子供の頃、ハロウィーンでどんな仮装をした?」 それに米メディアも答える。 「俺は、ダンボールに穴を開けて、手や腕を出して、『ボックスマン』になった」 ソーシア監督は続けた。 「愛車についても語ろうか。俺の車は、レクサスだ。もう、14万マイル(22.5万キロ)も乗っている。今も調子はいいよ。で、君の車はもうどのくらい走ってる?」 結局、あの大坂なおみの会見を、全米オープンでの優勝を機に、大坂の素をもっと知ってほしい、という趣旨で、関係者が企画したのだとすれば、あの展開も納得も出来る。 実際、愛嬌があり、言葉の中に飾らない人柄が滲んでおり、さらにファンが増えたかもしれない。 そうではなく、全米オープンでの優勝や、彼女のこれまでのテニス人生に絞ったものならば、はじめから質問に縛りを設けるか、そもそもスポーツメディアに出席者を限定することも出来た。それを望んだファンには、納得のいかない会見になっただろう。SNS上での指摘も、もっとも。 ではいったい、大坂本人はどちらを予想していたのか。 時折浮かべた困惑の表情は、後者であるようにも映った。実際、複数のメディアに対して「これだけの注目が集まって戸惑っている」というコメントも出している。 ただアメリカでは、会見する、取材を受ける、ということは、完全に仕事の一つと受け止められており、メディアの向こう側にファンがいることをアスリートは意識している。 そういうスポーツカルチャーで育った大坂にしてみれば、SNS上でファンがあきれるほどの質問にも、それほど大きな抵抗はなかったのかもしれない。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)