メディカルクリエーションふくしま20周年/医療機器の最前線(1) 改良重ね日々進化 県内事業者高い技術力
国内最大級の医療機器設計開発・製造に関する展示会「メディカルクリエーションふくしま2024」は今年で20回目を迎える。医療機器分野への新規参入促進のための県の基幹事業として2005(平成17)年に誕生し、医療機器開発を目指す人々が全国から集う展示会に成長した。今年は27、28の両日、郡山市のビッグパレットふくしまで開かれる。県内では命を救う医療機器開発に取り組む医療関係者や技術者がいる。課題を乗り越え、進化に挑戦する現場に迫る。(文中敬称略) 「2度も命を救われた」。医療機器開発支援センター(郡山市)で医療機器の安全性試験に携わる山田弘幸(60)は振り返る。心臓疾患のある92歳の父親が最新の医療に助けられた。 2022(令和4)年3月の深夜、市内の自宅で枕元のスマートフォンが鳴った。階下で寝ていた父親からの着信だった。胸の痛みを訴え、救急搬送された。急性心筋梗塞と診断され、緊急手術が行われた。血管が狭まるのを防ぐため、ステント(筒状の金属性の網)を入れた。 10年前にも同様の処置を受けていた。山田は「30分でも治療が遅れたら、亡くなっていた可能性が高い。医療機器の開発者や医師らの懸命な努力に支えられていると痛感した」。 開発された医療機器は法律に基づいた承認を経て使用できるようになる。品質や安全性を正しく評価するため、山田はメーカーなどの依頼を受け、試験装置を使って信頼性ある試験を心がけている。「新たな技術を搭載した『メード・イン・フクシマ』の機器の開発を期待している」と語る。 最新の医療機器を用いた手術は体への負担が少ないため、医療現場では患者の不安や手術への抵抗感の軽減につながると期待されている。福島医大外科研修支援担当教授の木村隆(53)は「これまでできなかった治療が確実にできるようになっていく」と展望する。 臨床の最前線のニーズを反映し、医療機器の改良が繰り返されている。血管を通る極細のカテーテルから大型の診断機器まで、約4千種類が存在する。従来は開腹する必要のあった場合でも、小さな穴から機器を挿入して治療できるようになった。 人の代わりに手術を支援するロボットの開発も進む。ロボットが患部の撮影などを担当し、3人で行っていた処置を1人で担うことも可能になる。木村は医療現場の負担軽減や環境改善が進むと期待する。 県内では医療機器関連産業の集積が進む。木村は市内の事業者に腹腔(ふくくう)鏡手術に使う道具「鉗子(かんし)」の製作を依頼。患者の状態に応じて角度や長さを調整したオーダーメードの機器が開発された経緯がある。国内有数の技術力を有する県内の事業者が最先端の医療機器開発をリードしている。 ■第20回医療機器設計・製造展示会「メディカルクリエーションふくしま2024」 県やふくしま医療機器開発支援センター、福島民報社などでつくる実行委員会の主催。27、28の両日、郡山市のビッグパレットふくしまで開く。県内外から255の企業・団体が出展する国内最大級の展示会で、医療や介護に関する最先端の技術を紹介する。ものづくり企業や医療機器メーカー、医療関係の参加希望者は公式サイトで事前登録する。時間は午前10時から午後5時(最終日は午後4時)まで。