冨永愛 時代劇に出たいと公言し続けていたら「吉宗」役に大抜擢。「準備をしながら夢を口にする。誰かに届け、と祈りながら」
国連持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)が2024年に公表した「世界幸福度レポート」によると、日本の幸福度は143カ国中51位で、前年の47位から4位下降しました。このような状況のなか、世界的トップモデルで俳優としても活躍する冨永愛さんは「コンプレックスを山ほど抱えていても、幸せになることはできる」と語ります。今回は、冨永さんが自身の生き方を綴ったエッセイ『冨永 愛 新・幸福論 生きたいように生きる』から一部引用・再編集してお届けします。 【写真】冨永愛さん「私は夢を口にすることにしている。言葉には魂があるから、やりたいことは必ず口にする」 * * * * * * * ◆夢は言葉にする。オファーがなくても準備する。だから扉は開く 時代劇に出たいと公言し続けて、思いがけず将軍様に 私は温泉が大好きで、地方の小さな湯治場のような温泉に行くこともある。 脱衣所で素っ裸になっている私に、地元のおばちゃんたちは気さくに声をかけてくれる。 「背が高いのねぇ」「モデルさんみたいねぇ」って。 もちろん「実は私、モデルなんですけど」などとはけっして言わない。 「うれしいなぁ。なろうかなぁ」なんて言って、ガハハハとみんなで笑うのが楽しい。 ところが2023年、状況が変わってしまった。そう、すっかり身バレしてしまったのだ。 しかも「えぇ? 上様?」と言われる。「将軍様?」「吉宗様?」あ、そっち? 知っていただき、うれしいんだけど、ちょっと服が脱ぎにくい……。 それもこれも、NHKドラマ『大奥』に八代将軍・徳川吉宗役で出させてもらったからだ。 あっという間に冨永愛が幅広い世代の人に知られるようになった。
◆ずっと夢見ていた時代劇 このドラマは、よしながふみさんの漫画が原作になっている。 若い男子にしか感染しない赤面疱瘡(ほうそう)という伝染病のせいで、極端に男性が減った江戸時代。 将軍は女性になり、大奥には生き残っている貴重な男性が集まることになる。男女逆転の大奥なので、将軍は打掛を着た女性が演じる。 出演のオファーがあったとき、私は「よっしゃー!」とガッツポーズをした。 ずっと夢見ていた時代劇に出演できるのだ。こんなにうれしいことはない。 でも、どんな役なのかがわからない。さっそく原作を読んでみた。すばらしい物語だった。 三代将軍・家光から始まった男女逆転の大奥が、幕末・明治維新で閉じられるまでが、まさに大河のように描かれていた。めちゃくちゃおもしろくて、一気に読み終えた。 そして考えた。私、どの役なの? 三代将軍・家光は少女だし、五代将軍・綱吉はめっちゃセクシー。原作漫画のビジュアルから考えても、私には吉宗が妥当だが……吉宗? いやいやいや、ありえない。 オープニングから登場する吉宗は、シーズン1では主役だし、出番も多い。演技経験が少ない私に、こんな大役がくるはずがない。 ところが、フタをあけてみたら本当に吉宗だった。 プレッシャーははなはだしかったけれど、大きなチャンスをつかんだと思えた。
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