安い「中華EV」が大量に流れ込んできただけ…「EVシフト」を強いられた欧州の自動車メーカーの悲惨な現在地
■自動車産業との戦略対話を開始する欧州委員会 欧州連合(EU)の執行部局である欧州委員会は12月19日、年明けからヨーロッパの自動車産業の将来に関する戦略対話を開始すると発表した。これは、先の11月27日にウルズラ・フォンデアライエン委員長が欧州議会で行ったスピーチに従い、各メーカーや業界団体、労働組合などと意見交換を行い、業界の将来を議論する枠組みだ。 【図表をみる】明暗が分かれたEVとハイブリッド車…EUの新車販売台数(動力源別) フォンデアライエン委員長ら欧州委員会の執行部が描いた電気自動車(EV)シフトの結果、EUの自動車産業は大きな痛手を被っている。自動車産業にディーゼル車に代表される従来型の内燃機関車(ICE車)からEVへの強制的な生産の転換を強いる一方、中国からは安価なEVが大量に流入する事態を招いたのは、欧州委員会にほかならない。 これまでも、ヨーロッパの自動車産業団体である欧州自動車工業会(ACEA)は、欧州委員会に対して、EVシフトの在り方を見直すように訴えかけてきた。またACEAなど経済界と近い欧州議会の最多会派の中道右派・欧州人民党グループ(EPP)も、EVシフトの修正を試みてきた。しかし欧州委員会は、譲歩には慎重な立場を取り続けた。 そうはいっても、2024年に入って明確となったEV市場の不振や、それを受けた域内の自動車産業の著しい不調を受けて、欧州委員会も立場を変えざるを得なくなったようだ。とはいえ、EVシフトという錦の御旗そのものを下すことはできないから、戦略対話というかたちをとって自動車業界の「ガス抜き」を図るというのが実際のところだろう。 戦略対話では、①データ主導のイノベーションとデジタル化の推進、②産業の脱炭素化支援、③雇用・技能、④規制枠組みの簡素化と近代化、⑤需要促進と財源強化の5つの領域に関して議論がなされるようだ。詳細はさておき、こうした大枠からも、欧州委員会がEVシフトの路線そのものを堅持している点が、明確に窺い知れるところである。