人事「降格になりますけど、良いですか?」→「全然問題ないです!降格してください」…損保営業一筋の57歳サラリーマンが、出世を諦めても譲れなかった“念願”【インタビュー】
継続雇用の条件に「それはないだろう」…57歳で迎えた「転換期」
――定年退職後のセカンドキャリアを意識され始めたのはいつ頃だったのですか? 三井:会社の定年は60歳なのですが、57歳のときに方向性を定めなくちゃいけないなと思いました。 今思うと遅いですけど、それまでは「60歳がゴールだ」と思っているだけでした。もちろん、当初は継続雇用も視野に入れていたのですが、人事に聞いてみると「それはないだろう」という雇用条件でした。 「継続雇用の間、副業をして新しいことにチャレンジしたい」と考えていましたが、人事部からの回答は「副業はいっさい認めない」と。しかも、継続雇用後は研修も必須ではなく、評価制度もない。さらに、報酬も下がると。 会社によっても条件は異なるとは思いますし、継続雇用を選択する人を否定するわけではありません。ちゃんと中身を理解して自分に合うのであれば、そういう選択も当然あると思います。 しかし、私の知る限り「ただ何となく継続雇用を選ぶ」というケースが多いように思います。 ということは「別に評価されなくてもいいや」という人だけが残っていくわけですね。これは企業にとっても良くないことですし、私自身もそういう環境に身を置くのはイヤだなと思いました。 こんなやりとりをしているとき、私は大阪に単身赴任で行っていたのですが、黙っていれば同じポジションのまま60歳まで過ごすこともできました。 しかし、様々な現実を知るうちに「まず東京に戻ろう」と思いました。人事に「東京に戻りたい」という話をしたら「降格になりますけど、良いですか?」と言われました。「全然問題ないです! 降格してください」と言って、念願叶って東京に戻りました。
キャリアコンサルタントの資格をとるも、立ちはだかった「年齢」の壁
東京に戻ってからは、関連本を60冊読破 東京に戻ってからは「定年」「専業主夫」関連の本を60冊くらい読みました。それらの中には「マイカーを手放そう」「年賀状もやめよう」という、社会を狭めていくことをすすめる本もありましたが、これは収入の問題を解消するためのもの。 定年退職後は収入が減ることが普通ですから、「今までと同じ生活じゃダメよ」というもので参考にはなりましたが、直接的な定年後のプランのイメージは湧きませんでした。 そんな中『あゝ定年かぁ・クライシス』原沢修一(ボイジャー)という本に出会いました。この本は定年前に思い描いていたことと、定年後のギャップを綴ったもので興味深く読みました。 著者の原沢さんは58歳で早期退職され、キャリアコンサルタントの資格を取られたそうです。この本を読むまでは、キャリアコンサルタントの中身もよく分からなく、そんな資格があることも知りませんでした。 それで、まず私も真似をしてキャリアコンサルタントの資格を取ってみたのですが、この資格を持って定年後の就職活動をしてもうまくいきませんでした。何十社あるいは大学のキャリアセンターなどを受けても、年齢を理由に書類だけで「ごめんなさい」と断られるんです。 正直辛いものがありましたが、「会社には残らない!」という宣言をした以上、後戻りはできません。「もし仕事が見つからなければ、派遣でもパートでもバイトでも良い」と、そういった求人に応募することもありました。 救いとなった「退職金」と「ローンの終わり」 ただ、それでもまだ救いだったのは「まとまった退職金がもらえる」「住宅ローンもそろそろ終わる」の2つです。 それから、自分で積み立てた個人年金もありました。金銭的にすぐに仕事をしなくても良かったのは、長年サラリーマンをやってきたおかげです。ですので、もちろん会社に感謝もしていますし、それまでの自分の経験も良いことだったと自負しています。 でも、それはそれ。「定年はゴールではなくスタートである」ということを、書類で落とされるたびに痛感する次第でした。
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