ジュエリーブランドHASUNA Founder & CEO・白木夏子さん~世界の問題へ目を向けるきっかけになったのは、ある一人の写真家との出会い|STORY
――短大でも大きな出会いがあったのですね。卒業後は予定通り留学へ? はい、イギリスのロンドン大学に留学し、国際協力に関する勉強を始めました。インドの貧困問題を考えるなかで、まずは現地を自分の目で見たいと思い、一年目の夏休みに、南インドの村に2か月滞在しました。 その村は、パソコンやカメラのレンズなどの電子機器類や、化粧品に使われるキラキラしたパウダーのもととなる鉱物が採掘されている場所で、近くにはジュエリーの原料となる鉱山もありました。子どもから大人まで、アウトカーストと呼ばれる最貧困層の人たちが、過酷な状況で働いている姿が見受けられました。
――どのような現実を目の当たりにされたのでしょうか? 働いても賃金が上がらないだけでなく、例えば子どもが骨折しても病院に行くお金がないため、骨が曲がってしまったり、みんなが井戸に飛び込んで身体を洗うので、飲むための清潔な水がなかったりと、想像を絶するような状況がありました。 ――飲み水の井戸に入ってしまうんですか? 日本人だったら、飲むための水の中に入ったりすることは絶対しないですよね。でも、衛生教育を受けていないので、汚れた水を飲んだら病気になる可能性があることが理解されていません。もちろん、学校も行っていないので文字も読めない状況です。 私たち先進国が使う便利で豊かな製品を作るために、犠牲になっている人たちがいるという現実に、言葉を失いました。 ――日本では当たり前だと思っている教育を受けることができないんですね。 教育を受けても仕事がないため、結局鉱山で採掘をするしかないという状況から、“学校に行く時間が無駄。だったら小さい頃から労働力として採掘したほうがいい”という発想になってしまうんですね。この貧困の連鎖を断ち切るためには、子どもへの教育も必要であり、大人たちへは子どもを学校に通わせる意義を教えなければいけません。仕事を作ることも大事であり、大人だけが働いて家計が成り立つようなお金の流れや仕組みを考えることも大切です。とにかく多くの問題があるということに気づかされました。 大学卒業後は半年ほど国際機関で働き、その後帰国して投資ファンドの会社に就職。就職して2年目のときにリーマンショックが起こり、「起業するなら今かもしれない」と考えて、エシカル(倫理的、道徳的)な方法でつくるジュエリーブランドを立ち上げることを決意しました。 撮影/BOCO 取材/篠原亜由美