元外資系金融勤務の女装家・肉乃小路ニクヨが語る“自分らしく”いるためのアドバイス
◇私たちってニューレディーじゃね? ――ニューレディーの話が出ましたけど。ネーミングからしてすごい発明だなと思いました。 ニクヨ:もともと、ドリュー・バリネコさんが作った言葉なんです。ある日「ドラァグクイーンって、自分たちとは少し違うのよね」という感じでブツブツ言ってたら、「私たちって、ニューレディーじゃね?」って、まず二人で始めたんです。 ――ドラァグクイーンとはどう違うのですか? ニクヨ:「クイーン」と呼ばれる方は、役割として華やかで大げさな振る舞いを求められる。もちろん、自分も一応やってきたけれど、どこか性に合ってないと言いますか……。 私はもう少し実直というか、等身大でフラットな感じで話をするほうが合っていたのかな。クイーンっていうのがツラくなってきたときに「私たちはニューレディーじゃね?」って言われて、そうだ!って腑に落ちて。ニューレディーになり13年経つんですが、もうクイーンという意識はありません。 ――ニクヨさんの魅力は、ご自身が持つ気品とか奥ゆかしさかなと。下ネタもあまり話されないイメージがあって、その意味でもニューレディーという言葉がしっくりきます。 ニクヨ:マツコ・デラックスさん、ミッツ・マングローブさんなどの影響かもしれません。長く活動されている方は、ものすごい知識量だし研究熱心だったりして。下ネタもたまには取り入れるけども、しつこくない。ドラァグクイーンというと、アングラカルチャーのアイコンというイメージですけど、アンダーグラウンドっていうのが昔から少し苦手でした。 ――最初からそういう感覚はあったのですか? ニクヨ:いや、昔は毛深い女装家で、もうアングラ中のアングラでした(笑)。でも、女装家を仕事としてやると決めて、ちょっとマイルドにしようと思って脱毛したんです。 ――そうだったんですね。 ニクヨ:私の周りにいた人たちから刺激を受けて、映画も本も音楽も、もっと好きになろうと思いました。下ネタのうしろ立てがなくても、厚みを持った人たちがいて、そういう方々と切磋琢磨ではないけども、交流することができたことが一番の財産だったかもしれません。 ◇いつかは身軽になって旅に出たい ――ちなみに、女装をやめたいなと思ったことはありますか? ニクヨ:それは一回もないんです。女装を通じてできた人とのつながりを失いたくないと思っていて。だから、会社員になっても女装は続けていたし、なにより私たちの接点は女装しかなかったので。 ――女装する方もいれば、そうじゃない方もいらっしゃいますよね。 ニクヨ:私はこの世界に入ってすぐに女装をしました。なぜかというと、ファンと演者という関係性になると、一定の距離ができてしまう。演者同士であれば、もっと深いやり取りができるんじゃないかなと。なので、じつは最初から女装に興味があったわけじゃないんです。本当にトランスジェンダーの方には申し訳ないんですが、女装はそういった人たちに近づくための手段だったんだと思います。 ――とはいえ、ドラァグクイーンとしての実績もすごいですよね。 ニクヨ:21歳から始めて、やっていくうちに深みにはまって27年間。結局、私の人生で一番続いていることが女装なんです。ただ、女装=ドラァグクイーンだと私自身らしくいられない部分があるので、私にとっては、ニューレディーとして女装も大切にしています。そんな私が、お金の大切さも伝えられたら、自分の遺書のひとつになるかなと。 ――ニクヨさんご自身は、今後どのような人生を歩みたいと思っていますか? ニクヨ:これからは体験価値が大切になってくると思いますので、世界中を旅することかな。去年も同じような抱負を語っていましたけど、実現できていませんね……。私って、本当にダメ人間でもあるんです。 ――お忙しいとい思うので、時間が確保できたら少しずつでも実現できそうですけど。 ニクヨ:どこかで一度、身軽になって旅立ちたい願望があるんです。洋服やモノとか処分して。でも私、ぜんぜん片付けられないんです! 女装家ってモノ持ちじゃないと成立しないので……。それを一回ちゃんと片付けて、身も心も優雅に船旅とかもいいなって。 ――その様子を、YouTubeなどで配信していただけたらうれしいです。 ニクヨ:そうですよね。お金ももう少し貯めることができたらいいなと思っていて。せっかく行くなら、今までよりも少し良い旅行を体験したいですから。
NewsCrunch編集部