馬と触れ合い「根の強い人間に育って」 障害児や不登校児受け入れ、長野でホースセラピー
長野県泰阜村で、障害があったり不登校だったりする子どもを受け入れる児童発達支援・放課後等デイサービス「てんま」は、牧場で飼育する馬との生活を通じて心身の成長を助ける「ホースセラピー」を行う。運営に携わる医師島田恵太さん(50)と妻奈穂子さん(49)は「簡単には折れない、根の強い人間に育ってほしい」と願う。 「パカラッ、パカラッ」。馬に乗った子どもたちが、風を切って駆け抜ける。下りた後にはブラシで毛並みを整え、ひづめの間の土を取り除く。動物に触れて世話をすることで、癒やし効果や責任感が生まれるという。 てんまは2020年7月に開所した。きっかけは島田さんが、全国各地でホースセラピーを展開していた寄田勝彦さん(56)と出会ったこと。「これが本当に人を治す、癒やすということかと感銘を受けた」と振り返る。その後馬を飼い始め、現在は島田さん夫婦の他、社会福祉士などの資格を持つスタッフ6人が事業を支える。
利用者は、島田さんの娘2人を含む、保育園児から中学生まで15人ほど。馬以外に飼育する猫やニワトリなどの生死に向き合うことも多く、島田さんは、牧場での経験が「生きる力を育む上で重要になっている」と話す。 脳性まひがあり車いすを利用する小学5年岩田龍星君(11)は、約2年前からリハビリ目的で通う。週1回の乗馬を繰り返し、馬上で上半身を起こしたまま下半身を脱力するなど、徐々に力をうまく使えるようになった。母真由美さん(49)は「成長につれ頻繁に起きるようになる脱臼や、進行する側彎症の症状が抑えられている」と効果を話す。 島田さんによると資金は十分でなく、スタッフの確保が課題だ。現状より運営条件が緩やかな、独自の教育内容を持つ「オルタナティブスクール」(もう一つの学校)への転換も考えているといい「子どもたちの居場所を守っていきたい」と話している。