サイゼ1号店「悪評だけだった」意外すぎる始まり 「わけのわからないものを出しているらしい」
驚くべきことに、母は「最悪」の立地と「最低」の客足について、「お前にとっては最高のことなんだよ」と言い続けてくれたのです。若かった私には、母の本意がしばらくの間、まったく理解できませんでした。 しかしあるとき、私は3つのことに気づいたのです。 1つ目は、「サイゼリヤのメニューは、どれもうまい」というのは完全な勘違いで、実は「まずい」ということ。 2つ目は、「サイゼリヤの価格は安い」というのは思い込みにすぎず、実は「高い」ということ。
3つ目は、「最悪だ」と信じていた店の立地は、「最悪」なんかではなく、母の言う通り実は「最高」だったこと……。 サイゼリヤの1号店は、実際のところ、確かに商売には向いていない立地でした。だからこそ、たくさんの工夫や改善を重ねることができたのです。その結果として、サイゼリヤの強みである「低価格、高品質、高生産性」に向けて努力することができた。私はそう理解しています。 現在、サイゼリヤは海外も含めて1500店舗以上を展開しています。もし1号店が「商売に向いている立地」だったら、どうなっていたでしょうか?
街場のレストランで終わっていたかもしれません。普通の料理を出していても、立地が良ければお客様は来ますから、工夫も改善も必要がないのです。 母が何度も指摘してくれたように、商売に向いていない立地に店を出したことは、偶然とはいえ非常にラッキーだった。ようやく、そう気づけたのです。 とはいえ、現状「さしておいしくないメニュー」を、劇的においしくするのは至難の業でした。でも、私にすぐできることがありました。
■自分中心をやめることが「成功の近道」 それは値下げです。お客様は1円でも安いほうがうれしいに決まっています。 最初は、まず全体的に価格を3割下げました。しかし、客足は変わりません。 次に、5割引きに踏み切りました。つまり半額セールです。それでも、お客様の数は増えません。 そこで、お客様に来ていただきたい一心で、7割引きにしたところ、突然お客様が殺到し始めたのです。 客数でいうと、それまでが1日5~10人だったのが、7割引きにしてからは1日なんと約500人。7割引きセールは、当時は大赤字でした。それはまさに文字通り、採算度外視の出血大サービスだったのです。