渋谷に新美術館「UESHIMA MUSEUM」が誕生 現代アートの上質コレクション650点が揃う
東京・渋谷の渋谷教育学園内ブリティッシュ・スクール・イン東京の跡地に、この6月にオープンした「UESHIMA MUSEUM」。東京大学工学部在学中に起業して以来、幅広い分野で活動する事業家で投資家の植島幹九郎が館長を務める。植島が2022年から蒐集を開始した、650点を超える現代美術コレクション(2024年6月現在)を公開する館として計画された。 【写真】新美術館「UESHIMA MUSEUM」の展示風景
素晴らしい作品は、世界中の人々と共有したい
2022年におよそ500点、2023年に150点ほどの作品を購入し、現在もコレクションは拡大を続けている。植島が現代アートに興味を持つきっかけとなったのは、2016年にニューヨークで訪れたMarian Goodman Galleryで見たゲルハルト・リヒターの作品だという。「まだ買えない。でも買いたい」という思いが高まり、満を持して2022年より本格的に作品のコレクションを開始。以後、「同時代性」を軸に、破竹の勢いで蒐集を進めた。植島は次のように話す。 「コレクションを始めた頃に、アーティストやギャラリーの方と話すと、作品は購入されたけど、公開されることも飾られることもなく倉庫で眠ったままであったり、そのまま売られてしまったりするなど、所在がわからなくなってしまうことも多くあると聞きました。その状況に違和感を持ちますし、素晴らしい美術作品は世界中の人々と共有したい。そのような思いもあり、蒐集を始めた当初から、作品を購入したらプロのカメラマンに撮ってもらい、キャプションを添えてコレクションのホームページとインスタグラムで公開してきました」
教育や研究に関わるミュージアムに
母校である渋谷教育学園に併設されたブリティッシュ・スクール・イン東京が麻布台ヒルズに移転することを知った植島は、学長に相談した。文化と教育を担ってきたこの建物をリノベーションし、引き続き文化と教育に関連する機関である美術館にできないかと。学長は提案を快諾。植島は自身のコレクションをただ公開するのではなく、教育や研究とも関わりを持つミュージアムとすることにこだわった。 「渋谷教育学園の敷地内にありますから、当然ながら授業で積極的に利用していただきたいですし、同学園に限らず、多くの学校に対話型鑑賞などさまざまな鑑賞体験を提供していきたいです。しかし鑑賞体験は、教育の観点から考えてあくまでも入口です。たとえば、キュレーションする機会が得られない若手のキュレーターが非常に多いので、空間と作品を活用し、キュレーションを考えていただける機会を設けていきたいですし、そこから新たな学習も生まれるはずだと考えています」
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- 【写真】新美術館「UESHIMA MUSEUM」の展示風景
- 【写真】2階展示より、左から村上隆『untitled』(2016年)、村上隆×ヴァージル・アブロー『Bernini DOB: Carmine Pink and Black』(2018年)。2階は複数の展示室に分かれ、10名以上の作家の作品を楽しめる。
- 【写真】2階展示より、オラファー・エリアソン『Eye See You』(2006年)。「2006年にロンドンのテートモダンで発表されたこの作品の前では、光によって肌の色の違いが消えてしまいます」と、作品横で説明する館長の植島幹九郎。
- 【写真】3階展示より、左から今津景『Drowsiness』(2022年)、『Mermaid of Banda Sea』(2024年)。
- 【写真】階段の壁には踊り場ごとに杉本博司の作品を展示。杉本博司『Einstein Tower』(2000年)。