金沢発最終のサンダーバードに乗ったら…粋な車内アナウンスに涙腺がゆるんだ 北陸新幹線延伸開業に伴い、金沢―敦賀間から姿を消した在来線特急
▽「サンダーバードと共に乗務員として育った」 やがて列車は小松駅に到着。駅には携帯電話やカメラ、タオルを構えた人々がいた。出発後も車内放送が続く。 「私たち北陸エリアを乗務する車掌は、このサンダーバードと共に乗務員として育ってまいりました。敦賀から大阪間で運行するのでさようならはまだ言えませんが、運行区間が短くなることは少々寂しい思いもございます。この場を借りて、『さようなら、ではなくありがとう北陸線、ありがとうサンダーバード。これからもよろしくお願いします』と伝えさせていただきます。今後とも、敦賀から大阪間のサンダーバード、そして敦賀からの北陸新幹線をどうぞよろしくお願いいたします」 今までありがとう。寂しいけれど、これからは北陸新幹線が関西、関東、そして北陸三県の懸け橋となる。うるうるする目頭を押さえていると、男性客が「ビールをおごる」と申し出てくれた。頬が緩み、お言葉に甘えた。
「北陸本線と、北陸新幹線に乾杯!」 しばらくすると、車掌が検札と記念切符の配布にやってきていた。「もう手に力が入らないです」と笑う車掌に切符を示し、パチンと印を押して貰う。配られた記念切符は、サンダーバードのマークが入ったおしゃれなデザインだ。 ▽大阪駅で回送を見送ると、どこからともなく拍手が 福井、敦賀と列車は西進する。どの駅も、見送りのファンがちらほら。駅名表示板も既にハピラインふくいのものに切り替えており、その上からJRのもののステッカーが張っているようだ。そして敦賀では、明日の開業の準備だろう、こうこうと明かりのともった新幹線駅舎が見える。明日からは大阪や名古屋から来る特急列車は、あの駅舎の1階に入線するのだ。 湖西線を抜け、京都、高槻、新大阪と続く。先行列車の遅れなどでやや遅延しているが、最後の車内放送が入る。 「本日は、加賀百万石の城下町・金沢から水の都・大阪まで北陸線を走行いたします、最後のサンダーバード号をご利用くださいましてありがとうございました。引き続き、サンダーバード号のご利用をお待ちするとともに、北陸新幹線のご利用につきましても心よりお待ちしています」