金沢発最終のサンダーバードに乗ったら…粋な車内アナウンスに涙腺がゆるんだ 北陸新幹線延伸開業に伴い、金沢―敦賀間から姿を消した在来線特急
母親と見送りで来て、手作りの旗を振っていた園児は「サンダーバードが大好き。さみしい」。一方「仕事でやむなくこの列車に乗るが、まったく切符がとれなくてね」と苦笑いする男性もいた。 ▽特急街道、2府3県にまたがる直通運転は終了 そうこうしているうちに、いよいよ、金沢発大阪行きのサンダーバード50号が金沢駅に入線してきた。後方の指定席車両に乗り込む。 午後8時47分、セレモニーの出発の合図と共に、列車はゴトリと動き出した。大勢のファンらに「ありがとうー!」と見送られながら出発した列車は、数分間何の車内放送もなく静かなままだった。「どうしたのかな」と思っていると待望の放送が入った。 「皆様、大変お待たせをいたしました。今日もJR西日本をご利用くださいましてありがとうございます。金沢、大阪を直通する最後の特急列車です。本日を持ちまして石川県から大阪府、2府3県にまたがる直通運転は終了し、明日3月16日から敦賀、大阪間を運行する全席指定席のサンダーバード号となります。
特急街道と呼ばれ親しまれたこの北陸線を走行するサンダーバード号の長らくのご愛顧、改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。また本日、サンダーバード50号ご乗車のお客様限定で記念切符をお配りさせていただきます…」 直通する最後の特急列車、という言葉をかみしめると同時に、この車掌さんも最後の北陸本線の乗務にどう臨んでいるのだろうと思いながら耳を傾けた。アナウンスは続く。 「サンダーバード号が主に停車した北陸線の駅をご紹介させていただきます。先ほど、加賀百万石の城下町・金沢を定刻通りに発車いたしました。 次は、歌舞伎の定番〈勧進帳〉の舞台、歌舞伎の町・小松には21時3分。その後、関西の奥座敷と呼ばれる加賀温泉、芦原温泉を通過し、日本で1番恐竜の化石が発掘されている恐竜王国・福井は21時31分。眼鏡の街である鯖江、越前和紙、越前打刃物など数々の伝統工芸品がある武生を通過し、在来線では最長のトンネル〈北陸トンネル〉を抜けると、日本三大鳥居の気比神宮、三大松原があり、北陸新幹線の始発駅になる敦賀には22時2分の到着です。琵琶湖の西側を走行する湖西線を走り、京の都・京都には22時59分。高槻には23時13分、新大阪には23時23分。水の都・大阪には23時28分の到着です」 大学時代、いろいろな場所に遊びに行ったことを思い出す。隣の席には壮年の男性が座っていた。この男性も乗り鉄で、関東から訪れたそうだ。敦賀まで乗車し、明日の新幹線にも乗ると言う。男性は、ビールを飲みながら放送を肴に「うんうん」とうなずいていた。そうそう、夜のサンダーバードはビールをカシュッと開ける音がよく聞こえていたものだ。